
人は愚かだ、と思う。
欲で動き、情で動き、大義で動く。自分を殺し、他人を殺す。
だが、愚かな選択をするのは、いつも人自身だ。
それをよしと思うのも、抗い続けるのも、同じ人だ。
―――― だから「彼女」たちは、人間を愛するのだろう。
第一譚 0:神話~第五譚:碧眼(おまけ)まで
かつて大陸を救った神は、対価として酒と音楽と人肌と求めた。
その願いにこたえるために創られた享楽の街アイリーデ。
伝統がある街ということも影響し、大陸中から客が集まっている。第一譚 0:神話~第五譚:碧眼(おまけ)まで
かつて大陸を救った神は、対価として酒と音楽と人肌と求めた。
その願いにこたえるために創られた享楽の街アイリーデ。
だが、同時にこの町には化生という問題も抱えていて。
神話の伝統を継ぐ店「月白」の主である少女と、化生斬りとして街にやってきた青年の物語。
娼妓であり巫でもある少女。武骨な化生斬りの青年。
二人の交流模様が中々いい感じです。
あの街に出てくる面々も個性的ですし。毎回二人の仲を誤解していくというお約束を守った御仁もいて笑えた。
第壱譚は、アイリーデという街がどんな街なのか、キャラクターたちがどんなキャラなのかを見せていくまさしく序章といった感じの展開。
第弐譚は、王都へと舞台を移し、なにやらきな臭い騒動が起きているんだなぁ、と実感する話。
で、ここら辺はまだ人の話であったんですが・・・
神話の伝統を紡いでいる話、ときたらそりゃあまぁ、色々と出てくるわけですよね。
ヒロインのサァリの不安定さも問題を広げていた原因だろうと作中で考察しているキャラもいましたが。
第参譚あたりから少しずつ変わっていっているんですよねー。
神が地に封じた蛇、伝説に残る神の関係者。
そうした脅威の中にあって、シシュは巫をどこまでも優先させて。
巫も、強い力によって意識がずれていきながらも、彼を大切に思う気持ちもあって。
恋愛色もありますけれど、この世界が結構気に入った。
第伍譚の最期、王の巫女である先視の力を持った彼女が語った彼女が見ていた未来が結構びっくりしました。
あれは確かに人の傲慢ではあるのだと思うけれど。それによって、先視の巫は大切なものを守った。
シシュもサァリも幸せになったんだと、感じられます。
ただ裁きを下した「彼」の言っていた通り、誰かは彼女を怒らなくてはいけなかったのでしょう。
愛と献身を以て行動した人もまた確かに存在したのだから。
主人公もヒロインも微妙にずれているから、そのずれた会話を交わしているところがなんとなく笑えたり、いい雰囲気になっていて楽しめたりするので気に入っています。
本編でシリアスになることも多かったので、第伍譚のおまけみたいに二人がいちゃついているエピソードとか、別の道を選んだ「彼」がどう過ごしているのかみたいな後日談があったら飛びつくんですがねー。
いつか書いてくれないだろうか。