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「だが舐めるなよ。砦も、王も、同胞も、全て消えようと、敵さえ残っているなら、俺はまだ戦える。亡霊には亡霊なりのやり方がある」
「なん、だよそれっ……おかしいよ、あんた」
「違うな。変わったのは世界の方だ。そして俺は、世界に合わせて自分を変えるなどということはせん。それは弱者の戯言だ。馬鹿馬鹿しくて反吐がでる」


いやぁ、これこそ「新人」の「ライトノベル」って感じがしていっそ楽しめました。
英雄に倒された破戒王。その側近であった四天王の一人が十年の時を経て復活。
平和になろうと「敵が健在なら戦うだけ」と悪役として変節しないウルズナの姿勢はいいと思いましたが。
「くくく○○がやられたようだな」「あいつは四天王の中で一番の小物・・・」な感じで真っ先にやられていたウルズナがその個性というか特性故に十年越しに復活したのはいいですねー。
「俺がオマエラなぞに」とやられ役の定番セリフを最初の負けイベントの時に吐いているあたりも・・・うん、個性たってていいんじゃないだろうか。

異世界人とか四天王とか、術式の根幹となる死線とか、設定が多くうまく説明しきれていないというか。
工夫はあるし、新人ならではの微笑ましさはある。
けれど、作品として洗練されてはいないから、面白さという視点では圧倒的に物足りない。
描きたかっただろう場面が多すぎるんだろうなぁ、という印象。もうちょっと削ったり絞ったりして、調整をした方が面白くなっただろうなぁ、と思います。

これで続くとして。
破戒王の遺産とか争いの遺物として封鎖された領域に踏み込んでいくんでしょうが。
そうするためには、四天王の名前とか過去の会話とか要素を今回で放出しすぎていたんじゃないのかなぁ。
ま、万一続きが出ても様子見でしばらくは手を出さないでしょう。
そもそも続き出るかも微妙なラインな気もしますけどねー。
こういう気持ちになってしまうあたり、終わりの導き方もちょっと今一つではありました。

死線世界の追放者 (富士見ファンタジア文庫)
ミズノアユム
KADOKAWA/富士見書房
2014-08-20