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どこにもいけないものがある。
さびついたブランコ、もういない犬の首輪、引き出しの奥の表彰状、博物館に飾られた骨格標本、臆病者の恋心、懐かしい夜空。
みんな、停滞している。未来につながることはなく、思い出の中で、寒さに震えるように身を縮こめている。それらは悲しいけれど、同時にささやかな安らぎも持ち合わせている。少なくとも彼らが、何かに傷つくことはもうない。


新創刊の新潮文庫nex。創刊ラインナップに気になる作家さんの名前が多すぎてかなり悩みました。
なんか一周廻って全巻買った自分は阿呆なんじゃないかと。
取り合えず創刊分はすべてそろえてあるので、その内感想は書きます。
紙質がなんか他の文庫とは結構違って、すべすべしていますね。いい紙だったりするんだろうか。中々手触りが好みです。

閑話休題。
階段島。この島には謎がある。
住人達は誰もが、この島に来た前後の記憶を失っている
島から出ることは叶わない。けれどなぜか荷物を注文すれば届いたりもする。
まー、メールとか電話とか外部に連絡は取れないという不思議空間なわけです。
そして最初にであった住人が彼らに告げる。
「ここは捨てられた人たちの島」だと。ここから出るには「失くしたものをみつけなければならない」と。
魔女という怪しげな存在と奇妙な事象が混ざっていたりはしますが、いい感じに青春モノとしてまとまっていたんではないかと。

捨てられた人々がいる島、ということですが別に厭世観に満ちているということもなく。
主人公たちは学生ですが、島にある学校に通ったりしてますし。
たとえば記憶を失っている事。魔女の異質さ。
メールは使えないのに、通販の荷物は届くこと。
随分とご都合な隔離された空間だなぁ、という印象がありますが。
決してそれをチープなものとして見せないのはさすが。

主人公は、悲観主義者を自称して島の秘密にうすうす気が付きながらそれを無視していた。
たた、かつてのクラスメイトが同じように島に来たことでその日常が変化していく。
この年でこんな思考、性格の奴がいてたまるか。もうちょと青臭さとか持てよ、と思わないではないですが。
その独特さが作品の面白さにつながっていると思うと中々。

ただ、今回のエピソードで、いくらかこの島に関する謎についても触れられていますしシリーズとしてどうやって続けていくのかが気になる感じ。
魔女についての話になるのか、主人公たちが別の問題を解決しようとするのか、別のキャラがメインになったりするのか。
あとは青春ミステリってあるけど、ミステリ要素そこまであったかなぁ、という印象。良質な青春モノであることは確かですけどね。
何や缶や言いましたが、やっぱり河野さんの文章は好きだなぁ、と思います。