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「……自分で言って、信じてなさそうだけど」
イリーネの指摘に、クースラは肩をすくめる。
「信じると目が曇る。だがかけらも信じなければ、新しいことは見つけられない。錬金術師の中には二人の人間がいる」

異端審問官アブレアの足取りをたどり、古代の民の謎を追う一向。
アイルゼンが『聖女付きだった大錬金術師』だったクースラたちを旅立たせる腹積もりを語っていましたが。
言われてみればそうですよね。フェネシスは、聖女として死んだということになっていますが。
その傍にいた二人は生き残っているんだから、前線となったあの街においておいても、他の面々の士気を上げる意味では良い駒であったでしょう。
まぁ、その場合フェネシスは人目につかないように隔離された場所に軟禁状態になるか、安全策で他所の街に移送という形になるでしょう。
クースラは自分のマグダラを手放せないでしょうから、またぞろ問題起こしそうな予感。

さておき。
アイルゼンとしては、クースラたちは重要な手駒ですが、それでも自由を許すのは、古代の民の情報を追う中で、龍に匹敵するような新たな知識を得られないかと期待しているからのようで。
こういう油断ならないけど、こちらに利用価値を認めて評価してくれる相手がバックについてくれたのはクースラたちにとっていいのか悪いのか。
騎士団に伝手があるのは頼もしいことでしょうが、いざという時それが首輪にならないとも限らない。
前回の鐘の話でも、安全策に逃げようとしていたら、聖女の錬金術師という名札の価値が上がってのっぴきならなくなったわけですし。

今回は北へと向かうことにした一行。
騎士団の力が及んでいない地域もあったりするようで、監視役・補佐役として密偵が数名ついているのはその辺の事情もかかわっているのだろうか。
そしてクースラのヘタレっぷりが留まるところを知らない。
お前孤高の錬金術師じゃなかったのか。

錬金術師という金看板を使えなくなったので、変装をしたりする訳ですが。
イリーナはもともと職人だし、ウェランドはそつなく着こなす。フェネシスも、職人見習いだと思えば、問題はない感じ。しかし、クースラはどうしても職人には見えない、ぎこちなさが残るとか。
こういうところだけ錬金術師きわめてどーすんだってツッコミ入れればいいんだろうか。
その様を踏まえたうえでそれぞれの設定を考えているわけですが。
反論の余地がなくとも面白くなく、微妙にふてくされているクースラがもう……その見栄っ張りな鎧は、前回ひびが入っているんだから、脱ぎ捨ててしまえばいいのに。
少しずつ二人の関係が変わったり、クースラの行動にも変化が見られたりと、着実に進んでいっている感じではありますね。

今回はガラス職人たちのお話でありました。
変装していても、会話をしていく中で、クースラのことを錬金術師と見抜いた親方とかいいキャラいたと思います。
少し柔らかくなったとはいえ、やっぱりどこまでも錬金術師であるんだよなぁ、という格好よさがありました。
フェネシス絡むと途端にダメになるあたりも、キャラクターとしては良い属性何ではないかと。

マグダラで眠れ (6) (電撃文庫)
支倉凍砂
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2014-09-10