「(前略)このボロボロの世界に価値なんてないかもしれないけど、それでもちゃんと意味はあるんだった」
なぜなら価値を認められるのは他人でも、意味を認めるのは自分だからだ。
だから人は誰しも自分の生まれてきた意味を探すために生きていく。
寿命を迎えた地球を、歯車によって再生させた、「時計仕掛けの惑星」の物語。
1巻が4月に出ているので、実に8か月も間が空いたんですねー。
次回に続く展開になっているので、もう少し早く出てほしいようにも思います。
しかし、この作品。「榎宮祐」という爆弾を抱えているわけで。
・・・えーっと、本気で倒れちゃわないんでしょうか、大丈夫? と心配になる事間違いなし。
著者コメント欄でも合同の後書きでも、結構すさまじいことになっているようにも思うんですが。
まぁ、とりあえず、仲良いですね、とは言いますが。お大事に、とも言いたいところ。
さておき、本編の感想です。
表紙にも帯にも登場しているので丸わかりですが、1巻で出会えなかったリューズの妹「アンクル」が登場します。
この調子で一巻ごとに「Y」の遺産を継いでいくんでしょうか。
次回は流石にそこまでの余裕ないように思いますけど。
兵器として作られたというアンクル。その性能は、前回圧倒的な力を持っているように見えたリューズに勝ち目がないといわせるほど。
いや、前回確かに「最弱」とは言っていたけど、現行の兵器ものともせずあっさり破壊したリューズに勝ち目ないとか、ちょっと製作者はっちゃけすぎじゃね?
地球を時計仕掛けで再生するって発想自体がとちくるってますけどね。
プロローグの前、序章も序章というか、最初に軽く触れられてますが。
永遠は存在し得ないのが真理だというのなら。
その真理さえもが永遠ではありえないのだと。
『彼』はそう考え、だったら直せばいいじゃないと思ったのだろう、とそんな感じに書かれてます。
まぁ、今回のアンクルの機能が『永遠』を体現する「永久機関」だっていうんだから、そっちの話でもあるんでしょうけど。
こういう前提からひっくり返そうとする発想は結構好きですよ?
1巻の最初に、ナオトたちが秋葉原でテロをしていた理由とかに迫る内容でした。
しかしまぁ、京都をパージしようとした前回も思いましたが、人類終わってね?
いつの世も悪い事考える人は尽きないというか、エゴによって回っている部分あるよなぁ、とか痛感させられました。
地球が終わった時に、ある意味で終わってしまった部分もあるんじゃないかと。
歯車で再現され、異常が出た場所をパージすることで延命してきた世界。
時計仕掛けだというのなら、本来僅かでもかけたら動かないはず。
しかし、パージされてなお、他の場所が補い、周囲にいくらかの影響を及ぼしながらも、世界は存続している。
そのことに対する甘えというか、理解できずに思考放棄した人が多すぎるんでは。
いやまぁ、『虚数時間』とか『永久機関』創っちゃう人間の制作物を理解できる人間なんてそうそういてもらっても困るんでしょうけど。
政府も、軍も、五大企業も。
だれもがあちこちで歪になってしまっているんじゃないか、と思います。
第3章で、マリーが尋問した相手の叫び。
勝手なことを言うものだ、と感じましたが、あの人にとっては確かにそれが事実だったんでしょう。
主人公たちにとって優しくない展開になりながら、それでも折れない彼らがいいですね。
前回の事件は赦せないだろうし、それに報復があったのも自業自得。
それを許容できずに、あちこちで歪みが表面化してきた感じでしょうか。
作中で「数百年かけて足がかりを得るような作業」を2人は「3日」で仕上げます。
ただ、この惑星が時計仕掛けにされてから、1000年。
2人がやったテロ行為につながるようなものは別として、この機構を理解しようと、足がかりを作ろうとした人はいないんでしょうか。
『技師団』も維持と保全が仕事のようですし、彼らにもわかっていないこと多いんじゃないかなーと。
前回みたいに、変な思惑もって動かれることもありますし。
まぁ、そんな背景の事とか考えながら読んでいましたが。
とにもかくにも、前回描かれていた、キャラ同士の愉快な掛け合いだったり、2人の異能と才能の合わせ技だったり、独特の世界観にあふれる魅力とかは少しも衰えることはなくここにありました。
気に入ったシーンもいくつか。
リューズとナオトがマンガ喫茶のカップルシートでイチャイチャしまくってたりとか。
マリーとハルターのアクセルとブレーキじみた掛け合いとか。
アンクル修理するシーンは、アレをやった「Y」ってやっぱり頭おかしいわ、っていうか。
凡人なんでナオトが何を言っているかさっぱりわかりませんでした。アレわかるのナオトくらいだろうけど!
しかし、いい作品読むと心が潤いますね。
満喫しました。