(そうだ、人だから迷うんだ。人だから間違えて、失って、絶望して。のたうって、大泣きして、また求めるんだ)
この物語に永遠は存在しない。
けれど、うたかたの恋にも意味はある。
(略)
だから一生懸命に恋をして、失ったら夢中で泣くんだ。
今回は、4チームある演劇部の合同での舞台。
それぞれのチームの主役級の面々が集まって、劇をすることに。
演目は「とりかえばや」。
詩也もなんとかメンバーに選ばれて、けれど、各チームのエースの前で大分迷っていましたが。
自分の演じることになった宰相中将の姿がうまくつかめなくて。
オマケに、またぞろ周囲で変な事件が起きて。
魅惑の永世王子、偲。静寂の白百合、百合香。無邪気の妖精、繭奈。
今回登場のキャラクターたちがまた、魅力的だった。
偲の演技力に充てられて、思わず弟子入りを願ったりと詩也が行動的。
けれど、同時に綾音との距離に迷い、吸血鬼であることにも迷い、心がぐらぐら揺れている感じ。
吸血鬼になった年齢から、もう成長しないと雫は言っていましたが。
容姿が変化しなくとも、心の在り方というのは大分変っているといいますか。
詩也が迷っている中で、覚悟を決めて行動を起こし、その痛みによって後輩である詩也を動かした忍先輩が格好良かった。
「簡単じゃ……なかった」。
彼女は叫び、その必死さに詩也は撃ち抜かれた。今回の主役はやっぱり忍と百合香の二人だったのかなぁ、と思います。
地味に気になるのは、名前だけ出てきてやたら存在感を放っている甲斐崎。
そして、終盤に気になる爆弾発現をこぼしていた繭奈。
この二人の話もその内描かれるんだよなぁ、と思いたいところですけど。
冒頭にある「ミナ=アリス・原田」の文章もまたかなり心くすぐられますが。
「あんな風に母を失った」という一文があるという事は、彼女は詩也が人との間に設けたという事になるんでしょうか。
相変わらず面白かったです。
後書きがちょっと心配ですが。少し手術をなさったそうで。
先に先に原稿を上げて余裕持ったスケジュールにしてるそうで当面は問題ないと言ってましたが。
他シリーズも含めて5冊分くらい余裕があるって、どれだけ……
凄まじいですね。無茶は苦手で、早め早めにやってますという事です。手術の方もそこまで悪くはなかったようですから、一安心ですが。倒れない範囲でやっていってほしいと思います。