「どうせなにかを犠牲にしなければ生きていけないのなら、一人でも多くの命を、一つでも多くの幸福を望んでなにが悪い!」血を吐くような声で、祐一は叫んだ。「世界中の人間が助かるような都合のいい答えがあるなら――言ってみろ!」
2月に新刊が出るので読み直しー。
全部の感想記事は間に合わないでしょうけど、ちまちま書いていこうかと思ってます。
1巻が発売されたのって2001年の事なんですねー。もう10年以上前なのか・・・
刊行の間がかなり空く作家さんだから、未だに完結してないんですよね。
好きなシリーズなんですけど、そこはちょっと残念だと思ってます。
上中下構成の下巻を2年? 3年? まぁ、それぐらい開けられると内容薄れますって。それでも新刊出ると買ってしまうぐらいには好きなシリーズです。
滅亡の危機に瀕した地球の話。
資源が枯渇しかけていて、あちこちでエネルギーやらなんやら、全体的に足りていないんですよね。
〈シティ〉という巨大な建造物を作り、閉鎖型の都市として管理しています。
そのシティですら全てを賄いきれず、シティの外で生活する難民じみた人も多くいるようですけど。
世界には、もう7つしかシティが残っていなくて、今回舞台になっているのは神戸にあるシティですねー。
そして、この世界には「魔法」とそれを使う「魔法士」が存在しています。
「I-ブレイン」というコンピューターを脳内に埋め込み、それによって、情報を書き換え、物理法則を操ると言う魔法。
これは、荒廃した世界で生きる人々の物語ですし、その中にある「魔法士」と「それ以外」の立場の差とか、そういうものが描かれた作品でもあるんですよね。
個人的には、祐一が一番好きなキャラですねー。
かつて起きた大戦で英雄と呼ばれた「黒衣の騎士」。戦闘能力だけじゃなく、判断や実行力など全てにおいて、現存するなかでは最強の騎士。で、過去に「最強騎士と呼ばれた恋人」がいて、その上で亡くしている。
・・・シリーズ終盤で死ぬんじゃないかとばかりに色々積み重ねてますけど。
錬という魔法士の少年が、シティの存続にかかわる重要人物である少女をさらったことから動き出していきます。
祐一は、シティに属する騎士として、また過去に犯した罪を自覚するがゆえに、少女を追い、まだ青い錬は理想を掲げ、少女を助けたいと願う。
罪のない少女を犠牲にして、ほんのなん十年かを永らえてなんになるのか。心のどこかで、そう叫ぶ自分がいた。人類の命運などとうに潰えているのだ。どうせ滅びる世界なら、せめて潔く、すべてのものに優しくあればいい。
だが、その声を押しとどめるように、もう一人の自分が叫ぶ。ここで諦めていい世界なら、どうして彼女は死んだのか。どれだけ醜く穢れても、生きることを諦めてはならない。
どちらが正しいのか、一〇年考え続けても、ついにわからなかった。
作中で、シティ側の祐一が抱えている悩みとして書かれている文章ですが。
この作品全体通しての悩み、みたいなものですよね、コレ。
滅びを受け入れるのか、どんな手を使ってでも生き延びて汚れてなお立ち上がるべきなのか。
魔法士の扱いっていうのは、この荒廃した世界においては、酷いところでは酷いものです。
シティの為のパーツ、みたいな実験も色々とあるようですし。
それでもなお手を尽くそうとする行動が、その先を見てみたい、という気持ちを引き出しますね。
シティ神戸を巡る争いの着地点、っていうのは結構凄惨なものでしたけど。
生き残った人間の数が、決して主人公たちにやさしくない。
今回登場した主要キャラたちは、この後それぞれの道を行き、時に交わったりするわけですけど。
シリーズの最後、どうか少しでも幸せな結末を迎えてほしいものだと思います。
打ち切りエンドだけは勘弁してほしいので、どうか残りのエピソードを書いてくださいという心境です。