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「負け続けてきた僕だから、きみに伝えられることがある!」
(略)
「十の負けの上に百の失敗を重ねたって、こんなの大したことないって! 笑って次へ進めるんだって!」
(略)
「ひとつのものが手に入らなかったからって、ひとつの願いが叶わなかったからって、そこでなにもかも終わってしまうわけじゃないんだぁぁっ!」


真実を打ち明けたシャールの前にあらわれたグリンダ。
彼女はシャールを「迎えに来た」といって。
これまで、ほかの人の視点からばかり描かれて、どんな人物かつかみどころのなかった彼女。
そんな彼女の視点のエピソードが間に挟まっていて、何を想い、どうして消えたのかがついに明かされます。
ただ、うん。やっぱりグリンダ、シャール好きでたまらないのな。なにあのブラコン。

グリンダの根幹にあったのは、自分とシャールが二人で一つ、という考え。
能力的な面と感情的な面で、バランスが取れた一つであると思っていた。
けれど、シャールは恋をしてはあっちこっち揺れ動いて、振られても笑ったり、どんどんズレが出てきて。
そのズレが大きくなりすぎて、一つでいられなくなったなら、もういらないと離れていった。
自分から捨てて自由になったはずなのに、それでもシャールの事が頭から離れず。
一緒にいるために、しまいには世界に完勝し始めるとか、なにあの迷惑な天才。

神がかった才能があるけれど、その行動指針がどうしようもなく人間臭くて。
わりと、グリンダの事嫌いじゃないですよ、自分。
無事に戻ってきてから、自分がどうしたらいいか分からなくなっているあたりとか。
それをシャールに諭されるあたりとか。あの姉弟、なんだかんだでいいコンビではあったんじゃないのかなぁ。

シャールは正体がばれてしまったため、家庭教師を続けることはできず。
聖羅のお願いで一時、牢屋に入れられる羽目になったりしています。
けど、王族の誰もが、男に惚れたという衝撃な経験をしていた二人ですらも、シャールを責めることが無かったのはいいですねぇ。
優しいし、これまでシャールが必死に積み上げてきたものが無駄じゃなかったんだと思えるのが良いです。
最後、シャールは故郷へ帰ることとなりましたが。
次の8巻で完結となるようですから、その後どうなっていくのかが今から楽しみです。