――いいか、お前は生きなきゃならん。なにがなんでも生き続けろ。それでなんになるのかは、わしにもわからん。辛いだけかもしれん。苦しいだけかもしれん。この先どんなに頑張っても、いいことなんかひとつもないかもしれん。それでも生きろ。生きて、突っ走って、這いつくばって、そして笑え――
フリーの便利屋として活動している魔法士、ヴァーミリオン・CD・ヘイズ。
彼がシティに雇われ派遣されたのは、ヒマラヤ山脈上級2万メートルに浮かぶ、極秘の研究施設だった。
しかし、生き残ったシティも一枚岩ではないので、下手な場所に落ちて被害出ない内に、破壊してしまおうという意見が主流になる。
それに反対する一部が、ヘイズを雇い、攻撃作戦が開始される前に、情報を盗み出して来い、と侵入させられることに。
特殊な雲に覆われた世界。
その雲の中においては、情報制御が使えない。
だから、雲の上を飛ぶことのできる航空鑑定には限りがある。
一応、高性能な演算機関と、高速演算能力を備えた魔法士が居れば、雲の上行けるようですが。
魔法士なんて特に、イレギュラーが誕生することもあるぐらい、不安定なもので。
狙って開発できない技術。
今の世において、雲の上を飛べるのは、3対のみ。
シティ・モスクワに1対。シティ・ロンドンに1対。
そして最後の1対が、フリーで活動しているヘイズ。
自らの肉体を変化させて戦う魔法士《龍使い》を研究していた施設。
事前に得られた情報によれば、実験体には暴走の危険性があるという。
分からないことだらけの状況で、侵入した先で出会ったのは、4人の少年少女だった。
彼ら、彼女らの明るさに戸惑いながらも、交流していく。
その果てに得たのは、驚くべき真相だった。
世界そのものが危機的状況にあるなかで、あんな優しい場所が、ただそれだけであるはずもないか。
ヘイズがこんな世界でフリーで一人で生きていくには、結構甘い性格だよなぁ、と思います。
でも、彼の出自というか、経験的にあそこで手を差し伸べないのは、なるほど嘘だよなぁ、という感じで。
しかし、ヘイズがたまたま派遣されてきたからこそ助かったけれど、もし来ていなかったら。
必死の抵抗をしていた彼らの痕跡っていうのは、消されてしまっていたんでしょう。
だからこそ、これはある意味での運命だったのか、と。
優しい場所にいたファンメイが、厳しい現実を知り、その中でどう過ごすのか。
外に出ることを選んだからには、負けないでほしいですねー。
最新刊まで読んでいると、とりあえず、その願いはかなえられているのですが。
色々と切羽詰まった状況で、あの明るさには救われます。
新刊でちょっと世界に変化が訪れそうな勢いですし、そこから先、どうなっていくのが本当に気になります。