「だけどな、おれが力を尽くすのはおれの腕が届く距離までだ。名前も顔も知らない誰かさんの為に働くなんてぞっとする。おれはそこまで責任を持てやしないし、責任を持つべきでもない」
天まで届く塔が存在する世界。
ここでは、その塔は神聖なものとして崇められ、教会によって管理されていた。
御神体として塔への巡礼が盛んにおこなわれており、教会に属する騎士はその護衛を行うことも多かった。
それは、人類の天敵である、獣頭類という異形の存在が、人を襲うから。
教会騎士の中でも英雄と呼ばれる実績を持つヴィル。
しかし彼は、塔の存在を疑問視していた。それは母からの教えというものもあったし、神の教えが行き届いているはずの教会上層部は分かりやすく腐敗していたのも一助ではあるでしょう。
任務にあたっていたある日、塔が輝き、ヴィルは一人の少女を保護する。
そうして話が、動き出すわけですね。
塔は神の創造物などではなく、何者かがもたらした、異世界移動装置。
教会上層部は、それを隠匿し、関係者の処理まで行っていた。
ヴィルはもともと、教会騎士の地位に執着していなかったので、これ幸いと邪魔立てする奴らを蹴散らして、旅に出てますが。
教会騎士の同僚であったエリザが心配していたように、ヴィルはかなりの自由人ですよね。
自分のルールがあって、それを護るために行動しているから、結構勝手だし。
周囲の人は割と振り回されていたんじゃないかなぁ。わりとクズだと自分でも認識しているあたり性質が悪いですね。
でも、綺麗なものに感動し、一宿一飯の恩義に報いようとし、出来る範囲での人助けもやっている。
自分の心に正直で、わりと判りやすいので、なんだかんだでヴィルの事は嫌いじゃないです。
ただ、この主人公一世界に一人女作りそうな勢いで、そこはちょっと怖い。
影響を受けた名家のお嬢様が追いかけてきちゃったりしてますし、かなりあちこちに飛び火しそうですし。
面白いのは、塔の存在を中心に、異世界を渡り歩く物語になっているところでしょうか。
異世界ものって言うと、異世界転生とか異世界召喚とかが増えてますが、こういう複数の世界を冒険する展開って言うのは中々ない気が。
上手く運べばいろんな世界を見られるっていう事で、結構お得な気もします。一つ一つの世界はあっさり風味ですが、割と面白かったです。