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「……君がこの剣でどれだけのことを為したとしても、君の罪は決して消えない。君の剣はこれから先も数え切れないほどの命を奪い、悲しみを生むだろう。人は君を兵器と呼び、恐れるだろう」
祐一は、剣の柄をディーの手に握らせ、
「それでも戦え。罪も痛みも、すべて背負って生きろ。強さとは……たぶんそういうことだ」

ウィザーズ・ブレインの中でも一、二を争うくらい好きなエピソードですねー。
舞台はシティ・マサチューセッツ。
『黒衣の騎士』として、過去の大戦で活躍した、現存する中での最強騎士、黒沢祐一。
その元に、かつての戦友から届いた一通の手紙を元に、その年を訪れる。

マサチューセッツでは、壊滅したシティ・神戸とは違う形でマザーシステムを維持していた。
『ファクトリー』。
「一体で恒久的な使用に耐えるコア」というコンセプトではなく、「安価で大量生産が可能なコア」という思想。
数か月、時には数日で「壊れる」コアを生産し、使いつぶしていく。
……いったい、どれだけの魔法士がコアとなるために作られて、使いつぶされてきたのかを思うと、こみ上げてくるものがありますけどね。

大量生産の過程の中で、乱数として、希に特異な能力を持った魔法士が生まれることがあった。
現存するのは3人。
一人は知覚能力が発達した、クレア。もう一人は、今回は登場せず。
そして、表紙に移っている最後の一人が、ディー。デュアル No.33。
右脳か左脳、どちらか片方にだけあるはずのI-ブレインを両方に備えている規格外。
並列処理によって、通常の騎士が持つ弱点を克服した魔法士。

だが、能力が優れていても、精神面では未熟で、悩みを抱えていた。
人を傷つけることができない。
その悩みによって、多くの任務を失敗してきたディーに、与えられた新たな任務。
今、マサチューセッツでは正体不明の魔法士『光使い』が破壊活動などを行っていた。
『光使い』の追跡調査。
道中で、ディーは、セラという少女と出会い、少しずつ変化していく。

更に話が進むと、祐一とディーが交流を持ったりするわけですけどね。
祐一が先人として、「まだ人を斬るべきではない」と諭したり、色々と教えている光景がいい感じ。
ディーとセラは、何も知らない状態で出会い、そして最後には亀裂が入った状態で、そばにいることを選ぶわけですが。
何とも言えないというか、全てを背負っていく決意を決めたディーが格好いいなぁ、という感じでしたけど。

母親として、強さを発揮しながらも、少しだけ間違えたマリアも、嫌いじゃないですよ。
ディーの悩みを深して、セラにも暗いものを背負わせてしまったわけですが・・・あの思いが、努力が全て否定されるのは、悲しすぎるかなぁ、と思うので。
P291のイラストがまた。あぁいう時間がもっと早く訪れていればよかったのに、と。
そういう残念さはありますかねー。でも、文句抜きで面白かった。