
「バッドエンドなんてありふれているさ。現実にも、物語にもな」
「だとしても、ですよ。もし仮にこの世界が、当然のようにバッドエンドで満ちているのだとしても、です」
雨坂は目を細めた。
「そんな結末、認められるはずがない。小説家というのはね、この世にささやかな希望をみつけるため、物語を創るのです」
気に入っている「サクラダリセット」の筆者の新作と言うだけで買う価値はある。
中々面白かったですよ。
「徒然珈琲」には二人の探偵がいる。
元編集者で、お菓子作りが趣味の佐々波。
天才的な作家だが、いつも眠たげな雨坂。
2人とも青年~中年あたりの男性ですが、腐れ縁で分かり合っている感じが、結構楽しい。
ある謎があるとき、彼らは、互いの本文を全うする。
つまり、編集者と作家というそれを。
「坂道を上る、同じワンピースを着た二人の女性について」
と、グリーンジャケットが言った。
「貴方なら、どんな物語を想像しますか?」
(略)
「じゃあ始めよう、ストーリーテラー。お前はどんな物語を創った?」
と、プロローグから少し引用しましたが。
こんな感じで会話が始まって、作家が話の筋を語る。
編集者は、展開に違和感があるとか、いろいろ突っ込んで質問し、それに作家が応えていくという流れ。
本当に、一つの話を作っていくかのように、謎を解いていくっていうのは中々面白いと思いましたよ。
ただまぁ、あらすじで誤解されそうというか、びっくりネタで、幽霊が出てくるのは注意、かなぁ。
日常系ミステリなのかと思っていたら、幽霊の話になっていて少し驚いた。
作者の持ち味の、優しい結末、透き通った世界、そういったものは健在なようで、個人的には楽しく読みましたけどね。
元編集者と、作家の話がするすると流れるように進んでいくので、読みやすかったかなー。
途中で別行動したりしていますが、結局最後には合流するっていうのもいい感じ。
続刊も決まっているようで、二人が追い求めるものがどんな結末へとつながるのかが楽しみ。