
「主人公がぐずぐずして前に進まなくて、話が硬直しちまった場合、オレならヒロインを動かすね」
叔父の影響で、新人賞の投稿作品を評価する「下読み」のをやっている高校生、青。
彼は、或る日、クラスメイトの氷雪という少女の作品を見つけて。
氷の淑女とまで言われている、孤高の少女が、フォント変化や顔文字だらけの、砕けた文章を書いている。
そのことに衝撃を受け、後に、彼女にアドバイスをすることに。
もうサブタイトルが秀逸で、それだけでいいんじゃないかなぁ、という感じがあります。
何を呼んでも、面白さを見出せる青と、自分に自信がない少女、氷雪。
この二人が、「せめて一次審査を通りたい」と、作品を一緒に作っていく話。
氷雪と祖母の抱えていた問題については、割とさっくり解決したなぁ、といいますか。
作品作りを通じて交流していく二人の話がメインだと思っているので、なんか勢いそがれた感じはありましたが。
短く中盤に盛り込んでくれたので、後半の告白に至るまでのすれ違いだとかがいい味出してくれたようにも思うので、なんとも難しいものです。
青が一歩引いてしまった時、行動を起こせる氷雪が良かった。
最初の彼女だったら、あぁやって動き出すことはなかっただろうから。
青の叔父さんからの助言もありましたが、中々あの人もいいキャラでしたね。
文章を書くキャラクターとそれを読み評するキャラクター。
後書きでは、『文学少女』のキャラクターとの対比が語られていました。
文学少女の二人は、それをしなくてはいられない、と宿命づけられていた。
けれど、青と氷雪は、才能があるわけでもなく、楽しみは感じていても、生きることと同義ではない。
コンセプトの違いが明確なので、同じ作者、似通ったキャラクターでも違う面白さが見えてくるのはさすが。
野村さんはシリーズものも面白いですけど、こういう単発の作品も光るものがあって、たまりません。