
「だが、考えるべきはそこじゃない。この場合、なぜ傷つけたくないかこそを考えるべきなんだ。そして、その答えはすぐに出る。――大切なものだから、傷つけたくない」
(略)
「けれど、どうでもいい相手なら傷つけたことにすら気づかない。必要なのは自覚だ。大切に思うからこそ、傷つけてしまったと感じるんだ」
(略)
「誰かを大切に思うということは、その人を傷つける覚悟をすることだよ」
確かにあったはずのものは失われ、奉仕部の関係は冷め切ってしまった。
全員集まっていても、これまでとは違っていて。
八幡も由比ヶ浜も、表面を撫でるような、取り繕った会話ばかりをしている。
そんなところに、八幡の策略で生徒会長に就任した一色が依頼を持ってきて。
他校との合同イベントについての協力を要請された八幡は、一人でそれを手伝うことに。
小町との交流で鍛えられた対妹スキルが発動したりしてましたが、しかしまぁ、会議は踊り遅々として進まず。
八幡が先送りにしてきていたツケが一気にやってきたような状況に。
小町にも気分転換が必要じゃないかなんて言われてましたね。
戸塚はやたらと八幡と距離が近いですけど「辛くても大変でも、泣き言いわないで一人で頑張ってる。そういうの、かっこいいって思う…」と彼の心境が少し明かされてもいました。
でも、結局葛藤する八幡を焚き付けたのは、例によって平塚先生で。
……この人、本当いい先生だと思うんですが、なんで結婚できないんでしょうかね。
地道に八幡攻略してきそうなんですが。もしもっと早く生まれていたら、なんて仮定を彼が考える程度には。
人の心理を読むのに長けているが、感情は理解していない。
平塚先生は八幡をそう評して、それは、修学旅行のあの時由比ヶ浜に言われたのと同じことで。
ヒントをもらい、八幡は思考を巡らせてました。
本物を欲したはずなのに、それを失ってしまった。間違えてしまった原因は何だったのか。
自分に甘えを許さず、遡って、原因を考えられる彼は、なるほど理性、あるいは自意識の化け物と称されるのも納得できるような。
そうして、間違えたから、問い直して、自分の心と向き合って。
踏み出して、失敗しそうになって、お互いに解りあったわけではなくて。
けれど、間違いではないものを一つ得たから。
一度壊れてしまって、それでも対峙したから。
まだぎこちなさは残っていますが、守ろうとした場所にしっかり中身が入ったようで、安心できました。