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「今日を過ごして明日になって 出逢っても別れちまっても」
「毎日を重ねていくってことは その結果の春も その先の日々も」
「いいもんだと思うんじゃ」


先生と生徒の話『背伸びして情熱』。姉と弟の話『赤くない糸』。
この二本が複数話からなる中編。後は短編が7本。
『背伸びして情熱』とか『桜姫』が結構好きですね。
しっかり悩んでそれでも好き、ってところは変わらずというか。
この微妙な距離感の描き方が上手いよなぁ、と思うのですよ。
あとはお酒さんとか出てくる、シュールなネタも結構書いていますけど、その辺も気に入ってますよ。

表題作『背伸びして情熱』。
女の先生に告白した、剣道部員の男子の話。
分からないことがあるという建前で先生の所に行ったり、行動力はあるね。
一方で先生はだいぶ迷っているようで、大分もどかしい描かれ方ですけど。
なんのかんので良い距離作れているから、その内ちゃんとくっつくんじゃないの。

桜の神様から来年の春まで娘を預かる話、「桜姫」。
子供に恵まれていなかった夫婦は、自分の子供のように彼女を育てる。
他人の子みたいに育てて、子供に寂しい思いをさせるよりはいい、という奥さんがいいですねー。
言葉づかいとか生活ぶりとか見ても、作中時代としては昔だなぁーという感じ。

酒好きな男のところにいる、手足が生えた酒瓶の話「お酒さん」。
お酒さんについて誰も疑問を持たずツッコミを入れないのはなぜだ。
……まぁ、短編でそんなネタまで仕込んでられないからか。酒の精霊みたいなものだと考えれば、いけるのかなー。
そんなお酒さんと一緒に暮らしている男が、妻に禁酒を言い渡される話です。

「正月早々」は、寝込んでいる人のところに、鬼の子供と、服の神が同時に来る話。
鬼も悪戯するわけじゃなくて、何の間ので入り浸っている子供みたいな感じで、ほのぼのできます。

「お嫁に行っても」は女の子同士の話。少し昔の時代設定か。
女学校を卒業して結婚する先輩とそれを惜しむ友人の話。友人にもなんだか相手はいるようですが。

「雨と猫」。男子しかいません。BLじゃないけど。
捨て猫を見守る男子とそれを目撃した男子の話。
面倒見切れるわけじゃないから、拾ってやるのも不義理だろうと悩んでいるようで。

「夫婦かき氷」。夏になるとかき氷を食べる習慣を持つ夫婦。
ただし、夫は数年前になくなり、盆にしか会えない。幽霊と普通に会話していますが、ま、お約束といいますか。
幽霊だから本当は何も言える立場じゃないとかそういう会話が、ちゃんと関係を表現してます。

「十五夜に、お風呂」。二足歩行する不思議なウサギが営む風呂屋。
『良いことだけの人生なんてきっと味気ない 心の栄養素が偏ります』。

ウサギが詩人というか、職業人というか。癒しを提供する場でそれは良いのか。

中編、「赤くない糸」。
姉と弟の話。近親とか教師と生徒とか禁断の恋みたいな要素持たせた作品多いですけど……また姉弟モノか。
近親ものにしても、大体姉と弟なんですよね。逆パターンがない。
それぞれの考えとか、距離とかそこらで差別化されているから、その辺は割り切って楽しんでますけど。
ラノベだと逆に妹モノは多いですけどねー。この辺はやっぱり読者層で変わってくるものなのだろうか。
それとも単純に作者の趣味か。
・・・後者な気がするけどなぁ。レーベルの色って要素が皆無ってわけでもないとは思いますが。
 
で、本編は、まー姉と弟っていう禁忌を隠そうとしたり。
その関係に悩んでいる姉が、学友から告白されたりしています。
微妙な雰囲気を描くのが上手いですねー。