「聞いてくれ、三人とも。――僕の中ではもう、考えたり悩んだりする段階は終わってる」
混迷の泥沼の中で、イクタの声だけがはっきりと揺るぎない。藁にもすがる思いで、三人の視線が彼に集中する。
「手段を選んでいる余裕は完全になくなった。希望とは別に覚悟も決めている。だから僕は、これから――かつて沈んだ太陽を、もう一度空に引っ張り上げることにする」
さて、前回痛い目を見た海賊軍の反撃のエピソードですね。
陸軍である以上、イクタたちに出来ることはほとんどない……なんてはずもなく。
イクタたち騎士団の策略をもって、マシューが会議へと参加する。
合間に、イクタの持っている英雄観みたいなものが更に深く触れられていましたけど。
なるほど、だからこそマシューを推しだしているのか、という感じで。
別のラノベで「英雄というのは逃れられない呪いだ」みたいなことが言われてましたけど、そういう感じ。
英雄は全体の理想でなくてはならず、個人が押し流されてしまう。
そんな流れには乗りたくないし、誰も載せたくない。
だからこそ、マシューを推す。責任感と同時に、頼りなさをもっているから。
好意を持たれても、英雄を生み出す流れには乗らない。そんな彼の資質を、生き方を貴く思っているから。
イクタは本当に、怖いくらい色々とモノを考えてますよね。
追い込まれた状況の中でも、それでも諦めずに模索する。
それは彼に言わせれば「正しく怠けるため」の行動なんですが、その行動は、英雄に近いそれだと思いますけどね。少なくとも、父親の名将の血は間違いなく継がれている。
海戦の方は、結構あっさり終わったかなぁ、という感じ。
色々戦場のなかで動きはありましたし、痛手受けたりもしていますが、それでも勝ちを掴み取ったのはさすが。
マシューも、今回は活躍していましたねー。
しかしポルミは再登場の目があったりするんだろうか。海軍と陸軍だと畑違うからなー、今回みたいな作戦がないと会えなかったりするのだろうか。
で、海戦を終えたと思ったら、今度は鉱山へ。
そこにいたのは、北域で相対した、不眠の輝将。
またここでイクタとのチェスじみたやりとりが発生するのかと思いきや、事態は急転直下で動き出す。
怪しさは感じていましたけど、このタイミングで動き出すのか、といったとこですね。
帝国内で起きた火種の影響で、騎士団と別れて行動することにあったヤトリ。
そしてイクタは、引き戻せない一手を打つ。
怠け者なところも、策士なところも含めてイクタというキャラが結構好きでしたけど、今回は本当に格好良かった。最後にオチをつけてましたけど、それでこそ、って部分もありますし。
あとは、イクタとヤトリの絆の強さが揺るぎないっていうのが、これでもかってほど描かれていましたね。
もう、あのふたりのコンビが大好きです。
それみて、歪な心に振り回されている姫さまもいましたけど。イクタが、姫さまの企画にのったようでいて、へらへらやっていたことについても、色々と考えがあったんだなぁ、と触れられていて個人的には満足。
ヤトリをうまく引き込めれば、あの陣営最強じゃないだろうか。
あとは、癒し系で、結構気に入っていたハロですが、今回なんか怪しい事情が明らかに……。
騎士団の中では確かに、見せ場が少ないというか、濃さが足りない部分ありましたけど、ここでそうくるのか、という感じで。うわー、どうするんだろう。これは予想外。
あっちにもこっちにも問題がありますが、その中でイクタがどうやって収拾をつけるのかが今から楽しみです。
……なんか鉱山で反撃しようとしている不眠さんとどうやって決着をつけるのか、というかどんな作考えているのかも気になりますが。