「願いは、叶った方が、幸せです」
シリーズ完結刊。文句なしに面白かった!
やっぱりこのシリーズは好きだなぁ。それだけに終わってしまったのが悲しい。
前回、ついに実行された管理局の切り札。
能力を忘れる境界線が咲良田の町も範囲に含めるように。
しかし、境界線よりも強度の強い記憶保持能力をもつケイだけは、まだ能力のことを忘れていなかった。
たった一人になっても、幸せを目指すために、行動出来るのはすごい。
リセットの期限があるといえ、激動の一日を過ごしますね。休まる時がなく、動き続けていた。
ケイがリセット前に相馬から聞いた、浦地の計画。
成功するまで続けるというのは、確かに一つの手段ですね。
食い止めようとしても、守備側のケイたちには、明確な勝利条件がない。
一つ一つの事件を止めることができても、大きな流れを止めることまではできない。
未来視の能力をもつ相馬にさえ、浦地の計画は止められなかった。
だからこそ、スワンプマンとしての役割を望まれている彼女は告げる。
相馬菫に問題を解決する未来が見えないのならば、別の誰かがすればいいのだ、と。
ケイがどんなに嫌がろうと、最終的にはそれを実行するとしっているから。
そしてケイは行動を始める。
二年前、相馬すみれを蘇らせるために手を尽くしたメンバー、宇川と坂上。
村瀬に智樹、岡絵里に至るまで。
友人たちに事情を明かし、協力を依頼し、そして自らの理想へと邁進する。
救われないより、救われたほうが良い。
不幸より、幸福のほうが良い。
涙は消し去るべきものだ。自然に生まれる笑顔が、何よりも価値を持つ。
――僕は純粋に、それを信じられるんだ。
だとか、
「僕は忘れないんだよ。最初に決めた目標と、そこを目指す理由を忘れないんだ。あらゆる人の、あらゆる言葉と行動を、忘れないんだ」
それは、うん。そこそこ素敵な能力だ。
みたいな感じで、ケイの内心についてもまた触れられていましたね。
幸福を願って行動する彼は、時に怖く思えることもありましたが。
今回のあちこちとか、春埼とのたわいのないやり取りで、少し身近に感じられるようになったかな。
少なくともこのエピソードを読んで、よりケイというキャラクターが好きになりましたけどね。
浦地さんとの会話でも、手段を選ばなかったり、それでも言葉を尽くしたりと、いろいろやってます。
敵陣営になっている、浦地さんも、決して悪人ではないんですよね。
自分の感情、目的、そうしたものに対して手を抜かないだけで。
やっぱりこのふたりは似ているんでしょうね。とりあえずの味方に引きずり込んでいましたが。
いつか本当の味方になったとき、このチームは最強なんじゃないだろうか。
で、裏地さんとの対面が終わってもイベントが終わらず、最後に相馬との会話があるのもまたいいですねー。
伏線が鮮やかに回収されていったというか、余分なピースが一つもなかったような、いい最終回だったと思います。
リセットに至るまで、そこからの反撃の準備、浦地との対面。
どこにも悲しさと優しさが見え隠れして。
「これから」の話を読んでみたかったような気がするけど、ここで終わるからこそきれいなんだろうな、とも思いますね。
透明感ある、綺麗な物語でした。