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「悪であれかし! 魔王とは秩序と二律背反する、世界に生まれた膿だ! 故に生来の魔王は大聖や蛟劉のようなチンピラ連中とは違う! 世が正しくあるために、世を律する絶対悪! 俺様はこの〝混”一文字の誇りにかけて! 災厄の末席を担うものとしてッ! 己の生き様に、何一つ恥じることはないッ!!」
(略)
「…………〝悪であれかし”。それがお前の霊格そんざい)の全てか?」
「そうだ。魔王は不退転。混世の王は討たれるまでが王道だ」


ついに始まる魔王連盟とのギフトゲーム。
これまでのゲームと比べても最大の規模で、あちこちで戦闘が巻き起こる。

最初に乗っていた、黒ウサギの過去も、旧“ノーネーム”の強大さが分かっていい感じ。
というよりは、あの魔王に倒されなかった組織を滅ぼした魔王がいかに強大だったか、っていう怖さがありますよね。
黒ウサギは、名前とかないのか、そもそも月の兎はそういう記号を持たないのか「黒ウサギ」という名前なのかと思っていましたが。
名前をもらう前に、襲撃を受けてしまったようで。それから200年名前を付けなかったのだろうか。
まー、トラウマな過去とつながっているだろうし。
金糸雀がつけてやらなかったのかな、と思うのですが、種族的な文化とかいろいろあるものなんですかねー。

魔王連盟側のキャラも、筋が通ってていい感じですな。
グライアがやられキャラすぎだけど。
今回は十六夜と殿下のバトルと、ジャックと混世魔王の戦いが気に入りました。
特に混世魔王。
正直なめてた。十六夜から逃げ回るだけだった前回と比べれば、格段に魔王らしく、格好いい姿がそこにありましたよ。
敵ながらあっぱれ。幼子をさらうような悪であっても、己を高らかに誇る、その姿がすごい。
そしてそれと相対したジャックがまた格好良かった。

(魔王なんだわ……この敵も…………!)
(略)
己の悪行を悪と見定めたうえで強権をふるう暴君。己の魂と存在の全てを賭けて法律(ルール)を定め、世界にそれを強制させる力と覚悟を持つ王。

 
と、飛鳥の内心、地の文で触れられていましたが。
魔王が災厄でありながら、それぞれの主義主張があって、それを譲らないというところだけは確かで。
敵ですら魅力的に映るっていうのは、なかなか素晴らしいですねー。

一方で十六夜対殿下の戦いもまた扱った。
お互いに、相手を倒せるのは自分だけと理解していた。
だからこそ、切り札同士をぶつけて、戦いの趨勢に賭けた。
殿下は十六夜を仲間を根本のところでは信じられてないと分析し、十六夜は殿下を戦う理由を他人に預け生きていない状態だと断ずる。
どこか似ているようで、はっきりと違う存在なんですよね、この二人。
しかしまー殿下の存在っていうのは結構気になりますね。
生まれた時期、その能力。原典候補者という立場。
十六夜の謎に迫る、鍵の一つではあると思うんですけど。

ジンはジンで、自分なりに行動を起こしていましたね。
戦う力がないなりに、考えて、策を練って、それを実行する。
タイミング悪く失敗したようですが、彼が言った言葉、目撃したもの、それは重要な情報です。
とりあえず生きているようだから、どうか活用してほしい。
 
あちこちで盛り上がってきた、と思ったところで最後、一気に状況が変わるってのがまたすごい。
さて、状況は最悪に向けて加速していますが、その中でノーネームたちがどうするのか。
気になって仕方がない。