
「少なくともわたしにとって、神のため、人々のために働くのは、何か見返りを期待してのものじゃないから」
「けどよぉ――」
「もしそんな打算がわたしの中にあったのなら、わたしはそもそも神巫の候補にすらなれなかったと思う。――神巫になれなかったからといって困っている人々を見捨てるようじゃ、それは神に対する裏切りだわ」
安心安定の短編。
本編とは違った面白さを見せながらも、少しずつ設定を見せたりとか。
手堅い出来ですよね。
しかし、これ読んで思ったのは自分がやっぱりヴァレリアが苦手なんだなーと再実感。
いや、今回の短編では、出番ほぼないんですけどね。その分、すらすら読めたんですよ。
前回は特に失敗したあたり「うわー、さすが『ぐぬぬ』」と思ってちょっと手が鈍ってましたけども。
さておき本編。
『お嬢様、それはご勘弁!』
『おお、シジュベール!』
『夢の続き、もしくは少女変転』
の3章構成。
『お嬢様、それはご勘弁!』はディミタールが生意気な荷物を拾って面倒事に巻き込まれる話。
送り届けた後、真面目に対応したうえで仕事をしっかり考えたうえで投げたりと、有能ですよね。
しかし、悪ガキが悪戯していると思ったうえで、荷物を川に沈めるとか鬼だ。
やっぱりディミタールのこういう、しれっと酷い手を打つというか、なんにでも容赦ないあたりは好きですよ。
『おお、シジュベール!』はタイトル通りシジュベールの話ですね。
このタイトルで出てこなかったらタイトル詐欺にもほどがありますが。
シジュベールは正直、アーマッドの王子様との比較でダメ王子路線なのかと思ってましたが。
前回登場した時の、最後、魔導剣回収していたり、今回の件しかり油断ならない感じがしますね。
本人は傑物じゃないけれど、という見せ方は見事。
『夢の続き、もしくは少女変転』
最後の話は、なるほど、こうまとまるのかと。正直驚きました。
いや、正直最初の方は、いったいこの話の主人公は、どうかかわってきているんだろうか、と思っていたんですよ。
「ついに語られる」 とあらすじで謳われているのに、出てきたことあったか、と本気で考えていた。
で、読み進めていって、あのシーンで真相を知るとこれまでの怪しさはこういうことだったのかと納得できるわけで。
しかしまぁ、リタの精神は、尊いですね。
例え神巫になれなくても。それでもなお行動を起こせるのは素晴らしい。
精神性でいうなら、ヴァレリアよりも大人なんじゃないだろうか。
読み進めるたびに、どうしてヴァレリアは主席に収まれたのか疑問しか生じない。
力があるといわれても、案外苦戦していることが多かったりするじゃないですか。
さて、あとがきでいろいろと触れられていましたね。
今回短編を挟んだのは、次回以降物語が動くから、ストーリー的に転換期を迎えるからだとかなんとか。
ギャラリナの祖国は結構変人が多いのか、とか。
途中で思わせぶりな登場をしていた人物が、カリンに言わせればお飾りだとか。
その辺あとがきで補完するエピソードなんですか。
というか、ここでその実力分析されているってことは、カリンに一流半って評価されたキャラは、 もう出てこなかったりすんだろうか。
さて、次巻以降からクライマックスに向けて加速していくそうなので、期待して待ちたいですねー。