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「手紙や詩なんてとりつくろって書くものですよ」

「つくろえないものもあるわ 隠しても隠してもあふれでる」

「男の裁縫なんてすきまだらけよ だから男は大概嘘が下手なの」

「……なるほど かく言う女は裁縫が上手すぎる」

「理論の破たんもへりくつも自分で上手く繕ってなかったことにしてしまう だから女は大概思いこみが激しい」

 

民を率い、領主を倒し新たな王となったマディス。

その腹心として付き従い友として傍にあったラルヴァン。

彼らは、固い絆で結ばれているようで、微妙に噛み合わず危ういバランスの上にあって。

ラルヴァンは妖精や精霊といった別の存在が感じられる目を持っていて。

けれど、そうした妖精たちが寄り付くのはいつもマディスの方で。

 

歪な状態でありながら、二人はそれなりにうまくやってきていましたが。

王が伴侶を迎え、その子が生まれた時に、すれ違いは決定的なものになってしまって。

ラルヴァンは自ら城を去った。

そしてマディスは、息子との距離を測り兼ね、ついには乱を呼んだ。

 

各話の時間は結構飛び飛びで。

ラルヴァンの心情が痛いなぁ。精霊の類が見えて、けれど祝福されず。

共に育った相手を見下しているけれど、どうしようもなく人を惹きつける彼の傍からは離れられずにいて。

 

軽蔑しながら、それを隠している嘘吐きだ、と卑下してますが。嫉妬なんて誰の心にもあるものだと思うし、ラルヴァンはそれを上手く制御していた方だと思いますがね。

傾いてしまった国。マディスとラルヴァンが領主を打倒してから30年とちょっと。もった方だと思うべきなのかどうか。

ただ、噛み合わなかっただけ。それでどんどん崩れて零れていくのは、辛くて痛い。最後、ラルヴァンは子をなしたようですけど、苦労性の彼がどうか、未来においては少しは良い想いをしてくれてるといいんですが。