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「私は自分の見たものすら信じないの。それどころか主観ほど曖昧なものはないと思っているわ。目前を百鬼夜行が通り過ぎても気のせいか、目の錯覚だと考えて信じないでしょうね」

「それならどうやったら信じるのよ」

「だから、どうやっても信じないのよ。私の生きる世界ではもうオバケだの妖怪だのはいないことになってるの。そう決めているのよ。(後略)」

 

ボカロPてにをはの描き下ろし小説。

人と怪異と因果の紐が絡まり合ってしまった時、多くは悲劇を招く。       

例えば、自宅に突然魚が降って来る異変だったり。

あるいは、神隠しにあってしまった子供だったり。

その絡まった紐を解く、「紐解屋」を営んでいる石坐とその周辺の物語。

被害にあった人達からの相談だとか、形は色々ですが、5つの怪異について描かれています。

 

全体的にそんなに怖いって感じはしなかったですねぇ。

ゾンビというかキョンシーみたいな死んでいるけど動く「黄泉子」なるキャラクターなんて頭が残念だから、登場シーンが大凡ギャグになりますし。

 

一話の「怪雨」なんて、怪異が引き起こしたことは確かに厄介でしたけど。

魚が数えきれないほど降ってきてすぐに腐って周囲から文句言われたとか、社会的に面倒くさい。

……結局のところ、始まりは人間の生んだ縁だったわけで。

五話の「鬼喰」にしたって、恐ろしいのは人の欲と言わんばかりの状況でしたし。

下手な怪異よりも人間の方がよっぽど性質が悪いっていうのがよくわかる話ばかりだったような。

 

石坐自身にも色々と謎がありそうな描写はありましたし、続きを出そうと思えば出せそうな感じではありますね。ただ、手を出すかは微妙なところですねぇ。

ひゅうおどろ 煤川石坐の怪異譚
てにをは
KADOKAWA/エンターブレイン
2014-02-28