「人をたらし込む才能は、血だな」
(略)
「要するに、お前の宿命なんだ。諦めろ、土御門。行って……飛車丸(このバカ)を起こして来い。俺はまだ、お前らをみていたい」
ついに決戦の日を迎えて。
春虎はいよいよ手段を択ばず、支局の襲撃とかを始め。
夏目たちは、天海の知名度やらそれぞれの伝手を使い、陰陽庁の真実を告発する。
その動きの中で、『十二神将』たちもそれぞれ決断を迫られて。
クライマックスに向けて加速していく描写は、さすがの一言。やっぱりこの作者さんは、物語の佳境を描くのが上手いよなぁ。
他の作品でもそうでしたが、伏線を見事に回収してくれると言いますか、キャラを大事にして、展開に生かしている感じがします。
いやぁ、キャラクターが多い中で、うまくそれぞれの葛藤を描いている。
『結び姫』弓削と宮地のやり取りなんかも、いい感じでしたね。一線級の陰陽師でも、迷い行動しなくてはならない。
弓削の迷いも、分からないではないです。自分の信じていたものが揺らいで、信じたいものがあって、信じきれなくて。だから、「誰か」にすがった。
宮地がもうちょっと底意地悪かったら、長官側になっていたかもしれません。けど、彼はそれを良しとしなかった。叱咤して部下を、先に進めた。
……三善に言われていましたが、彼は彼で甘いですよね。天海を捕えた時も、彼が手を回していたから、天海は生き延びたわけですし。
そして、春虎が夜光ではなく、春虎と名乗るわけ。
大義名分の為ではない。たった一つ譲れない、シンプルな覚悟。
彼は結局夏目の為に動いていて。
その夏目の不安定さの秘密なんかも今回明らかになってましたけど、いや、見事に騙されてた。
長官達優位はそうたやすく動かないだろうと思っていましたが。
意外な形で、庁舎を捨てる形にはなり。春虎や大友の行動によって、あと一歩のところまでは近づいたものの、届かず。
けれど最後に、一か八か賭ける目を春虎が見つけているので、どうか勝ちの目を拾ってほしいものですが。
まぁ、この緊迫した状況で次回はまた違う場面に行きそうなので、それが楽しみでもありますし、少しもどかしくもあります。