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まんがや音楽ではなくて、この子が世界を広げてくれるんだという予感がした。昨日の夜に手を出さなくて良かった。このこと要られたら、ずっと望んでいたものが手に入る気がする。いつも聞いていた曲がいつもとは違って聞こえた。ただ聞いていただけで、こんなに楽しい曲とは気づけなかった。

 

海が見えるある街の市立図書館が舞台。

階下には児童館もあり、そこで働いている四人の男女のお話。

章ごとに視点が変わり、それぞれが抱えている事情なんかが見えて、交差したりするわけです。

 

第一章の語り部となる本田は、長年片思いしていたが失恋。

その相手が産休に入ることになり、一年契約の職員として春香がやってきて。

春香が来たことで、全てが動き出したという感じがしますね。

正直なところ、最初は本田視点という事もあり、彼女の働き方には忸怩たる思いがありましたが。

なんだかんだ憎めないところもあるんですよね。しれっと職場に馴染んでるしたたかさもありましたし。

 

巻末には吉田大介の手による解説も収録。

「あらゆる恋愛は、特別だ。奇跡だ。奇跡は、この世界のどこかで、こんなふうに起きている」と書かれていますが。

まさしくそんな感じで。特別な出来事は起こらない。想いなんて実る事があれば、実らないことだってある。長く生きれば積み重ねの分、傷を負う機会だってある。

それぞれに恋愛絡みのトラウマを抱えていますが。

上手く折り合いをつけて、距離を詰めていった感じがあります。日常の中に上手く恋愛要素を混ぜ込んで見せてくれた、というような印象。

良質な作品だったと思います。

 

海の見える街 (講談社文庫)
畑野 智美
講談社
2015-09-15