「おじさんは、フーバーのために宇宙へ行くのよね? ヴァルター、あなたは?」
(略)
「まだ見たことのないものを見たいという好奇心や、誰よりも遠くへ行きたいという向上心、ってのはどうです? 僕の好きな言葉なんですけど」
鈍器製造職人、川上稔の出発点。
ゲーム小説大賞の金賞受賞のデビュー作。
昔から変わらないなぁ、という安心の雰囲気を感じます。
精霊式機関という流体が結晶化した「精霊石」で動く機関が存在して。
それを利用した兵器なんかも多く開発された世界。
ただ、コレは便利な一方で、精霊石が月の光に共鳴し出力を暴走させてしまうという性質ももっていて。
人類初の友人宇宙船の打ち上げに失敗したこともあり、宇宙へ行く方法を模索することは諦められてしまった。
けれど。折れずに備え続けた男も居て。そんな十五年の願いの果てが描かれています。
主人公たちは、大気圏脱出が可能な、進化する機体なんてものを作り上げて。
軍に協力する形で資材だとかを得ていたので、方針の違いから追われることになってますが。
彼らは最初から最後まで宇宙しか見ていなくて、全ての障害を乗り越えて目的を達成したんだから大したものです。
初期作品で、厚さもそこまでではないので、川上節は感じますが大人しい部類ですかねぇ。