「現実の君たちなら諦められたことを、君たちは諦められないんだ。誰にだって大切だとわかる感情よりも、自分たちにとって純粋な感情の方を選んでしまえるんだ。僕は現実の君たちが、嫌いじゃない。彼らはいろんなものを諦めて、変化して、満点ではないけれど幸せになっていくんだと思う。ハッピーエンドのひとつの形だ。でも君たちは、あっけなくその結末を否定してしまう」
魔女について何かを知るらしい安達がこの島に現れた事で、島の状況は静かに、けれど確かに変化していって。
この島の歴史と、魔女の事情が紐解かれていって、引き込まれました。
想った以上に階段島がファンタジー要素強かったというか、あらすじの青春ミステリって文句とはどんどん離れているような気がしてきますが。
階段島の住人達は、「捨てられた」彼らは、その当時のまま変わらずにいて。
島にいる七草は、島にいる真辺はどこまでも彼らの理想を貫いている。
何かを変えるって事は大変だろうけど、同じくらい変わらずにいつづけるって言うのも困難な事だと思います。
一人で生きていけるわけじゃないのだから。他人との交流を、誰かからの干渉を、完全に排除しきることは出来ない。
或いは魔女が望めばそんなこともできるかもしれませんが、けれど階段島は基本的にそんな束縛をする場所でもない。
まぁ、今回は堀が彼女のルールを超えて動いた部分もあったりしましたが。
揺らがない彼らは、安達の行動の結果、魔女の仕組みについて知っても変わることなく、それぞれの道を行く。
階段島を嫌いだと叫び続けてきた真辺は、変わることなく魔女の過ちを指摘するし。
七草は、この島を綺麗だと思っているから、何とか守ろうと動く。
お互いを嫌ってるわけではないけれど、会話だってできるけれど、本当に大事なところを譲る気はない。
現実の彼らとはまた違う形で並び合う二人の結末がどうなるのか、気になります。
100万回生きた猫の哲学が嫌いじゃないですねー。
彼と七草が話していた「愛」についての話は楽しく読みました。
……あとは安達が引っ掻き回していてどうなるのかと冷や冷やし通しだったからなぁ……