「ただ強いものには数で勝てる。ただ怖いものには理性で勝てる。本物のモンスターがいるのは、いつだって思考の中だよ。彼はそれを持っている。みててごらん――」
(略)
「架見崎が、破綻するかもしれないよ?」
河野裕さんの新作。
上下巻だと最初から分かってたので、下巻出るまで待って、一気に読みました。
……一気に読んだ後、感想書いてない山に埋まったんですけど。
高校生、香屋歩と幼馴染の秋穂栞。
「ウォーター&ビスケットのテーマ」という、視聴率が悪いながら一部に熱狂的なファンを獲得したアニメ。
それが好きだという共通点でつながっていた、幼馴染。
本当はもう一人いたけれど、その子は姿を消して。そして高校生になったある日、謎のダイレクトメールが二人に届く。
差出人の元へ赴けば、架見崎という特殊な街に放り込まれて。
8月がループする街。ある条件下で、与えられた特殊能力が使える街。
壊滅的な状況になっていて、コンビニやスーパーなどの物資がある拠点を狙い戦争をしている町。
街一つを使った、陣取りゲームとでもいうか。運営側は「なんと、おふたりは異世界に迷い込んだのでした」とか言っていましたが。
消えた幼馴染もこの街に居るかもしれない、と思いながら街に入った二人は、速攻で戦争をやっている集団に取り込まれてましたが。
弱小だが善良なチームに保護された……と言うより確保されたという方が正しいか。
事情を聞いているうちに、他の強力なチームに戦争を仕掛けられるシチュエーションだ、と歩が指摘。
実際その通りになって、怯えながらも、上手く状況を動かす歩は中々策士です。
「石橋を叩いて渡る」みたいな感じの臆病さと慎重さによる周到な準備の賜なので、策士という言葉はあまり似合いませんけど。
なんだかんだ自信を持っているキャラが多かった作者さんの作品の主人公としては少し変わってるかな。
でも、よくわからない「戦争」に巻き込まれても、自分の主義主張を替えず、冷静に出来ることをやり遂げた彼には、ぶれない芯があって、中々読み応えがありました。