「巫に贈るものだ。きちんとしておきたい」
(略)
彼女の為に捧げるのだ。全てに変わらない想いと、真っ当な筋がなければ。
『月の白さは知りてまどろむ』という作品の短編ですねー。
WEB本編は一度第五章で完結となり、後日談となる六章以降が連載されてるんですよね。
小説家になろうとカクヨムで掲載されていて、カクヨムの方に八章が途中まで乗ってます。気長に続きを待っている。
シシュとサァリの物語の続きが読めるというだけで、もう、本当に幸せなのですよ。
さておき、この同人誌『赤き唇の~』は第五章前に起きた事件を描いています。
シシュとサァリの関係が近づいて、けれどまだその道が重なっていない。この不器用な二人の交流が見ていて微笑ましい。
戦闘力とか言う単位で見ると、どっちも常人離れしてるんですが。
それを気儘に振るうのを良しとせず、けれど使うべき時には躊躇わない。その在り方が、美しいと思う。
この短編だけでも、本当にお互いがお互いを大切に思っていて。
アイリーデの人々に、シシュが客として選ばれるんだろうなというのがよくわかる。
シシュが贈り物をしようとして真っ先にサァリが候補に挙がるあたりで、明らかですけど。
「将を射んとする者はまず馬を射よ」とか「外堀を埋める」のように、目的を達成するためにまっすぐ行くのではなく、周辺から問題を片付けろという言い回しがありますが。
……この二人「相手を大切にしたい」という大目的を既に達成しているし、サァリなんて「シシュのそういうところが好きなの」とか言うのに、その手前にある問題で立ち止まってるからな……
好きな雰囲気で全体まとまっているんですが……特に気に入ったエピソードは、シシュが菓子屋出禁になってた所ですかね。
あの不器用さがシシュらしい。一応出禁解除の条件もはっきりしていたので、それを為した後、きっと彼は土産に買っていったんだろうなと思うと、なんかほっこりする。
最近『Unnamed Memory』ばかり推してましたが、『月の白さを知りてまどろむ』も好きです。WEB版で良いからみんな読もう……。
(23年4月追記)
DREノベルスより刊行されている『月の白さを知りてまどろむ』の電子書籍版の特典として付属することとなってます。今から読みたい人には電子版月白、オススメです。