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「急いでますけど、単に私の論文の締め切りが近いので」

「締め切り」

「論文を準備しつつ、上司の無茶ぶりに応えなきゃいけないのが宮仕えの世知辛さです」

 

確かに死んだはずの婚約者。

彼女の屍が、見覚えのない紋章を焼き付けられた状態で、夜の街を動き、追いかけても捕まえられなかった。

そんな不審かつ不穏な体験をした猟師がはるばるファルサスの王都まで来て陳情をして。

酔っ払いの見間違い、そんな風に思われたのかかるくあしらわれて。

 

まぁ、ファルサスといえば、いつかの時代の王太子が側近一人つれて、方々の怪奇話の現場を訪れていた国ですし。

このぐらいの不審な話はじつはそこらに転がっているのかもしれない……

という冗談はさておき。陳情を全て信じて、一から十まで全力で対処するなんてのは土台無理な話で。調査が必要だ、というのも嘘ではないんでしょうが。

形式通りに処理した後、その様子を見て興味をもったトップが人員を差配してるあたりフットワーク軽いというか、なにしてんの王様……

 

そうして無茶ぶりをされたのが雫――ヴィヴィア・バベルで。

なんというか、強かになったなぁ彼女。宮仕えの世知辛さを語ってましたが、それを味わっているのはファルサス城関係者くらいなのでは……

いや、キスクもワンチャン……? ニケ辺りは振り回されてそうですけど、火種は大体こっちだからな……

子供たち世代――IPの時代に入ると、どっちもどっちな状況になりそうですが。

 

閑話休題。

調査に訪れた街で、サクサク調べ解決していく雫が頼もしい。

色々と知識も増やしているようで、封印資料の類の情報もいくらか把握してました。

……まさか最後にあんなオチがつくとは予想してなかったですけど。この世界、懐広いな、というか。思いもよらぬ引き出しがまだまだあるな……と思いました。