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「僕らの価値は自明だ 例うならばこれは魂だ」

ヨルシカ、好きなんですよ。
n-bunaさんの作風が好きなのもありますが。
好きすぎて、三月のパンタシアのアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』も買いました。

閑話休題。
もう初回盤が出ると知ったタイミングで、特典とかも気にせず初回盤予約したんですが。
仕事でドタバタしてたのもあって、その後もあまり情報仕入れられてなくて。
合間で公開されたMVを聞いたりして、期待を膨らませるくらいはしてました。
そんな状態で引き取りに行ったもので、最初は箱状なことに驚き……更に開けた後手紙の物量にさらに驚かされました。
え、これ3500円って赤字にならないの? 大丈夫? みたいな気分。

とりあえず、まずは歌詞も手紙も見ずに曲を一巡聞いて。
その後手紙を読みながら、一曲ずつ追いかけていきました。
あと、気になるタイプなので手紙の並び順をメモしてから読んだ。

一人の青年が、音楽を辞めるまで。最後の創作の旅路。
正直最初は、エルマという友人が亡くなりそれで創作意欲を失ってしまったのかと思いました。
瓶詰の手紙を海に投げるように、届くかどうかわからない手紙を書いて詰めているのかと。
途中で違うんだ、とはわかったんですけど、

重かったり、暗かったり、辛さが伝わってくる。
でも、決してそれだけではなくて。
音楽に向き合ってきた青年の情熱が確かに残っていて、波及する。

収録曲「語学は花緑青の窓辺から」の一節「僕らの価値は自明だ 例うならばこれは魂だ」が印象に残ってます。
他の手紙に青年の解説があって、それもまたいいテイストになっていたんですが。
あぁいう製作者の意図に触れられた文章が、好きです。
青年の魂の叫びが、胸に刺さって痛い。
n-bunaさんの実体験が織り交ぜられて、青年が血の通った人のように形作られている。
いや、バイト収入6万で家賃5万6000円、手元に4000円しか残らないって極限生活すぎないか、とは思いました。ガス止まったとか書いてあったし。凄まじい……

手紙と一緒に曲を聞いたあと、気になってしょうがなかったので、公式で紹介してた各種インタビュー記事を読みに行ったりもしました。
エルマが青年の手紙を読む、その追体験をしてほしかったからこういった形式になった、とか。
無事に届いたんだ、とちょっとほっとしたような……届いてしまったのか、みたいな矛盾した気持ちが生じました。

Skream!のインタビューに在った、受け取った相手が祈りととるか、呪いととるか両方の側面がある、というのが的を射てますよね。
確かに、ここまでの情念を注ぎ込まれた手紙は、一種の呪いだし……音楽に対する真摯な祈りでもあると私は感じました。
とことん芸術に向き合っている、というか。
まぁ、青年の気持ちはかなり重いとも思わずには居られませんでしたが。
インタビューのひとつで「妄執の塊みたいなの」とか言われてましたし。
だからこそ、祈りか呪いかという二択が生まれたわけで。
こんな手紙を、そうして伝えられた詩を見せつけた上で、夏に「エルマ」というアルバムを予定しているって言うんだから、たまりませんね。

対になるコンセプトアルバムという都合上、今作の初回盤もすぐに生産終了にはならないみたいなツイートも見ましたし、是非、多くの人に初回盤の手紙を読んでほしいものです。
あとインタビューも楽しいです。なぜ音楽のインタビュー中に蠱毒の話になるんだろう(笑)。

どの曲も好きですが、表題の「だから僕は音楽を辞めた」、「語学は花緑青の窓辺から」の二曲が特に好みです。