「だから今、こうしていられるコトが、幸せ」
高校を卒業したばかりの春休み。
恋人を病で亡くし、失望していた主人公の下に、彼女からの手紙が届く。
「もう一度会いたければ『リセット』して」
という謎の手紙。その手紙の指示に従ってある住所を訪ねれば、そこには猫のかぶりものをした「クレセント」と名乗る不審者が居て。
クレセントの指示に従いながら、彼女との思い出の場所を訪ねていく。
多くの人が彼女の死を惜しんでくれた。ただ、過去形で語られる事がどうしようもなく痛い。
辛い事があったら立ち直って生きてゆく。多くの人がそうする事は分かる。
けれど、最愛の人を亡くしたばかりの主人公は立ち直る事が出来ずにいて。
自分でもわかっていて、それでもどうしようもない。
だから『リセット』なんて不確かなものにすがっている。
主人公の叫びがどうしようもなく読んでいるコチラにも刺さる。
喪われてしまった彼女との交流を、『リセット』を求める旅の合間合間でしっかり描写してくれているからこそ、なおさら。
突拍子もない行動をとるところもあれど、彼にとっては魅力的な存在で。
彼の想い出を通してみる彼女の存在に惹かれない筈がない。
『リセット』の真相についてはネタバレ回避で何も触れませんが。
この作品はタイトルにある通り、とても美しいと感じました。おすすめです。