「――間に合った……」
オフィーリアが魔に呑まれ、ピートを含む学生が攫われた。
わざわざ手間をかけて「攫った」以上、何か目的があったためで即座に殺されてはいないだろうが……実験などの生け贄になっていない保証もない。
オリバー達は無事に帰還し、数日を過ごしていましたが。その間に行われた先輩たちの探索でも良い報告は上がらず。
教師陣も頼れない。「いざとなれば教師が助けてくれる」と生徒に思わせないための処置で、教員が動くのは生徒に対処しきれないと判断した8日目以降の事だそうで。
ミシェーラの父親は『守る力がないなら。ここでは、友を得た瞬間に失っているようなものなんだ』と語ったそうで。
毎度こちらの想像を超えてくるおっかなさですねキンバリー。この作品について語る時毎回のように言ってるんですが、やっぱり卒業時生存率八割って、嘘では……?
攫われた友の為に、迷宮に挑むことを決めたオリバー達。
しかしそれはほとんど自殺行為のようなもので。一年生で第二層に踏み込むことも稀なのに、オフィーリアの研究室は、最低でも三層。それも四層近くでは、なんて予想まで出てくるんだからなおさら。
そこに来て意外な顔が手助けしてくれて。キンバリーらしく、下心含みではありましたが、オリバー達にメリットのある提案でもあって。
後輩の成長を見守る先輩の視点も入って、中々新鮮でした。
……そうやって、オフィーリアを見守っていた人々も居たんだ、と。
彼女の過去が描かれていたのが胸に痛い。
かつてあったゴッドフレイの対策には、思わず笑ってしまったし、それを二か月続けた精神に驚嘆した。あとちょっと引いた。
けど、そんな彼だからこそ、五年生で統括なんてやってるんだろうなぁ。彼の信念はこのキンバリーにおいて異質で、眩しいもので。
あるいはオフィーリアが「サルヴァドーリ」でなかったら。そんなIFを少し、夢見ました。
サルヴァドーリという家の辿り着いた果てが彼女なんだと思うと、こんな騒動を引き起こした相手ではあれど、切なく感じる。
色々と気になる情報も出て来たりしましたが……オフィーリアが起こした事件に置いて、オリバー達は友を攫われた当事者でしたが。
オフィーリア自身の問題においては部外者だった。あの結末は、そういう事でしょう。
キンバリーの、魔道の恐ろしさ。先輩たちの積み重ねて来た時間。
そうした物を見せつけられたエピソードでした。
これにて、オリバー達の一年は終わり、短い休息の後2年生になるそうで。
しかしまぁ、オフィーリアにすら穏やかな時間があったことを描かれると、剣花団の行く末が本当怖い。いつかの破たんが約束されているようで。
……あとがきの「こうした結末も、キンバリーではさして珍しい話ではないのです」という一文が、3巻を読んだあとだと印象的ですね……