「いきなり上手くできる人間などいない。私も君の歳には失敗ばかりだ。君は自分の力では叶えられない望みを願い、その責任を自ら取ると口にした。今がその時だ」
電撃文庫の『ご主人様は山猫姫』を思い出しました。
異民族の言葉を扱える主人公が、姫の教育係になって。
ひょんなことから弓術を匠から教わり、試験に合格する。そして、争いに巻き込まれていく、と。
あの作品も好きなんですよね。晴凜の弓の腕が随所で光ってますし。
異種族が居たり、主人公の能力が言語寄りであったり、早々に王位につくことになったりと差はあり、この作品の魅力となっています。
『葡萄大陸物語』が気に入った人は『山猫姫』も読んでみて欲しいですね。
さて、本作の感想に戻りますが。
表題に『葡萄大陸』とあるように、小国が葡萄のように乱立する世界。
豹人をはじめとする獣人やエルフ、人間といった種族が棲む大陸で、今はなき移民の集団アルカートで育ったメルがランタンという都市を訪れた事から物語は加速します。
異種族の言葉を全て解するメルは言葉渡しという通訳の仕事を求めて、なんとランタン王から依頼を受けることに。
豹人族の姫シャルネに言葉を教えながら、距離を縮めて。
政略結婚は、相手側の物言いに彼女が反発したことで破談になる。ランタン王も過去の実績から警戒されていますが、病身で。次期王にメルを指名し、戦争が始まる流れ。
しかしまぁ、前ランタン王の策が凄いというか。今回起きた出来事のほとんど彼の御仁の掌の上ですもの。
最後の最後でメルという最高の流民を拾い上げた事も、天運でしょう。
今回は各所の協力もあり何とかしのいでいましたが、これからはメル自身の才覚によってまとめて行かないといけない。
中々の難業にはなりそうですが……五章、籠城戦前夜のメルの行動を見るに、なんとかなるんじゃないかと思える魅力を感じた。
続きが楽しみなシリーズが増えましたね。