虚無です(挨拶)。
という冗談はさておき。

ライトノベル作家、涼暮皐先生。
今年の夏コミで、サークル「ビッグ・ラグーン」から刊行された『失恋文庫 書き下ろし失恋小説アンソロジー』を主宰された方です。曰く「深淵で声かけたら、深淵にいた人が集まって来た」。

一部界隈では「失恋構文」で有名とかなんとか。
『失恋文庫』は作家陣の豪華さもあり、完売し即重版が決まり、最近その重版分の流通が始まったようです。当ブログでも感想を書いているので「コチラ」からどうぞ。
涼暮先生が『失恋文庫』に寄せた短編のタイトルが「虚無・A」というあたり、失恋力高かった。失恋力って何。



(追記)この記事を作成した後、電子版の配信もスタートしたようです。興味がある方はどうぞ。

逆境を描くのが得意と言いましょうか。主人公が良く危機に陥ります。
絶体絶命の状態であろうと、諦める事を知らない彼らの生き様が魅力的です。
あと、敵対組織のスケールがデカい。大体、主人公たちとは別の道を選んで世界救おうとしてる。
キャラそれぞれに誇りがあって、読んでいて楽しいです。

以下、商業作品の紹介。

1、『セブンスターズの印刻使い』(感想『1巻』、『2巻』、『3巻』) 
小説家になろうで連載中の作品。HJ文庫から1~3巻まで刊行。
涼暮先生をこの作品で知ったのもあって、一番好きな作品ですね。
たった7人で構成された冒険者集団「七星旅団(セブンスターズ)」。
彼らは、五大迷宮を攻略するという前人未到の偉業を為し…解散した。
元セブンスターズの一員という肩書を隠し、学生をしている青年アスタが、一応主人公。

過去に伝説を遺した。呪いを受け解呪の方法を探している。
元々は地球から異世界に召喚された人物である。
と、なろう系の王道要素を織り込んで、ともすれば「俺TUEEE」になりそうなものですが。
アスタ、毎度骨折したり吐血したりしてるせいで、強いって印象が薄れがち。

というか、周囲に主人公張れる才能ある人物が大量にいるおかげで、主人公そっちのけで事件が進む場面もありますしね……
アスタより強いキャラはいる。けれど、この物語で中心にいるのはアスタなんです。
どこぞの貴族が主人公とか言われたりもしてますが。彼だって、アスタに勝ちたいという欲を持ってるわけで。アスタ、あちこちに影響を与えている良キャラなんですよね。



2、『やりなおし英雄の教育日誌』
HJ文庫より1~3巻刊行中。
魔界から侵略を受けている世界。主人公のアキは、仲間たちと魔王との決戦に挑むも敗北。
滅びを迎える世界で、魔女の助けを受けて……過去に戻った。
そこで、かつての仲間を鍛え上げるべく教師となったものの……
なぜか過去の自分のポジションのキャラが女子になっていたり、未来を知っていてなお戸惑う事態が頻発。
それでも、もう二度と彼らを死なせないと足掻くアキの在り方が格好いいです。



3、『滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた』&『死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた
ノベルゼロより刊行。
命数世界シリーズ。「滅びゆく世界と~」がナンバリング0、『死にゆく騎士と~』がナンバリング1。
どちらから読んでも楽しめると思います。私は、「滅びゆく世界と~」から読みましたが。
救済の運命を課された「神子」と、世界の物語です。

「滅びゆく世界」では、「神子」エイネと幼馴染の騎士ラミの旅路が描かれます。
「最愛の少女を喪い、彼女の命と引き換えに生きながらえてしまった少年の、愛と希望の物語」。
帯の文句がコレですからね。別れが約束されていて、それでも引き込まれた。
丁寧に、丁寧に。終わりへと進んでくのが、面白くも恨めしかった。
宣伝時からして、Twitterで挿絵持ってきて「彼女が死にます」ですからね。人の心がない……

「死にゆく騎士」は、生きながらえた騎士ラミと新たな神子キトリーの物語です。
志は高いものの、神子としての力を上手く使えないパワフル少女キトリー。
彼女の師となり導きながら……救世を阻もうとするラミとの温度差が、いい塩梅です。
キトリーもまた神子である。その覚悟を示してくれる場面が印象的。





4、『オカルトギア・オーバードライブ』(感想『1巻』)
ノベルゼロより刊行。
「加速時計」という、時間を操る魔術式の時計。
それを主要キャラがほぼ所有しているのが特殊なファンタジー。
SFチックでもありますね。時間操作とか、普通なら強キャラの専有だろうに。
「覚醒」と言って、一段上の能力を発現するケースもあるので、差別化は図られてますが。
クロノスエンド。十二の区画に分けられた、時計塔を中心にした街。
バベルと呼ばれる特権組織と、それに反発する組織が存在して……
元バベル所属の探偵ユッカが、地下組織の一員の少女から依頼を受けて、過去と向き合う話。



5、『ワキヤくんの主役理論』(感想『1巻』、『2巻』)
カクヨムにて連載中。MF文庫Jから1~2巻刊行。
すいません未読です。買ってはあるので、そろそろ読みたい。

胃痛系ラブコメだという事だけ知ってる。いや、書籍化範囲に胃痛はないらしいですけど。
作者さんフォローしてると、更新時の皆さまの反応が回ってきて、結構アクティブな読者さんが多い印象。

(以下追記)

先日ついに読みました。WEB最新話まで読んで、胃痛系と言われている意味を察した。
1~4で挙げたのはファンタジー要素ある作品でしたが、『ワキヤくん』は純粋な現代学園モノですね。
自らの過去を省みて、高校進学を期に変わろうと思った少年少女の話。

一人は、我喜屋未那。彼は、「物語の主役でありたい」と主役理論を友人と構築して、実践した。
一人が、友利叶。彼女は、「物語の脇役でいたい」と一人で脇役哲学を編み出し、不言実行する。
全く逆の指針をもとに新生活を送る二人は、本来なら交わるはずがなかった。

しかしアパートでは隣室で、おまけにクラスメイト。
バイト先も同じと来れば、否が応にも交流を迫られて。
やいやい言い合った結果としてアパートの壁を壊し、なし崩しに同棲状態に突入してるんだから、彼らじゃなくても「どうしてこうなった」と言いたくなるでしょう。

片や理論で、片や哲学で武装し、青春を彩ろうとする二人。
わざわざ面倒な枷を作って自らを縛っているようなもので、不器用極まりないですけど。
そんな二人が、時に喧嘩して時に友人と遊んで。概ね楽しそうな時間を過ごしているのも事実なわけで。
癖はありますが、楽しい作品だと思いました。2巻表紙にもなっているヒロイン、さなかが可愛いです。



(2020/10/19追記)
6、『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。』(感想『1巻』、『2巻』)

2020年1月より刊行された涼暮先生の最新シリーズ。
コミカライズもされていたり、公式アカウントが手を変え品を変え宣伝していたり、結構手が込んでる感じがしますね。

7年前の7月7日、7つの流れ星が降り注いだと言われる街、流宮。
それは「星の涙」と呼ばれ、都市伝説と化していた。
「願うことで、1番大事なものを取り戻せる。代わりに、2番目に大切なものを失う」。
露店でアクセサリーを売ってるくらいには広まってるようですが、大抵の人は、信じていない噂のようなもの。
けれど、主人公の冬月伊織はある理由からその「星の涙」に思う所があって……

「星の涙」による異変に遭遇して、それを解決するSF(少し・不思議)要素のあるラブコメですね。
1巻と2巻でタイトル・サブタイトルにも工夫がされており、読み終えるとまた違った見え方がして、こういう仕込みがある作品は好きですね。
タイトル系は担当さんによる犯行らしいです。いいぞもっとやれと思う自分と、人の心がないと叫ぶ自分がいる……。

近く3巻も発売する、期待のシリーズです。
カクヨムにて、各巻の序章が公開されているので、興味ある方はそちらも確認してみてください。