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世界を飛ぶ鳥は、自由だ。

ただ私たちは、そうではない。区切られた格子越し、世界と己を見ている。

 

全ての人に、出版の義務が課された世界。

ただし――生涯に『1冊』だけ。

シリーズ物を刊行するような職業作家はいなくなり、各々が創作者となった。

本を刊行するという義務、あるいは権利への向き合い方は様々で。

 

「出版しなくてはならない」から思い入れもなく刊行した人が居れば、一冊だけの記念品として愛着を持つ人もいる。

『人は誰しも一生に一つは名作を生み出すことができる』と法案を後押しした政治家は語ったそうですが。たった一つの作品に、真摯に向き合い名作を生み出せたかと言うとそうでもなく。惹かれるものも煩わしいもの混ぜこぜになった、渾沌がある。

 

現在の本も、似たような面ありますけどねー。刊行点数が増えて、個人で追える範囲には限界がある。

自分にあった本を引き当てられるかは、運任せな所があります。ある程度は、経験で賄えますけど、絶対じゃないですし。

 

閑話休題。

まだ自分の本を形にしていない「私」が、この物語の主人公です。

誰かの本を読んで、そこからヒントを得ようとしている。

そしてある日手に取った本に衝撃を受けて、三度繰り返し読み、四度目に気づいたメールアドレスへメッセージを送った。

返事が来て、交流をして。最後に紡がれた、本当の言葉が。その在り方が、私にも美しく見えました。

 

もし私が、この時代に生きたなら。どんな本を創っただろうか。

そんな事をふと思いました。

同人誌ですが、kindle版も配信されていて、読みやすい環境にはあるので気が向きましたら是非。

ジルコニア
藤村 由紀
2018-02-28