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「そんなものより、もっと…………もっと欲しいものが、あるッッッ!!」

 

私を殺してと言って、包丁を自らに突き付けた銀子。

そんな姉弟子を見て、どうすればいいと悩む八一。考えて考えて、上手く取り押さえて。

銀子の目に光がないのが本当に怖かった。

彼女の絶望は深く、言葉をいくつか交わした程度じゃ如何に八一でも、救い出せない。この場合は、八一だからこそ言葉が届かないというべきですかねぇ。

 

折しも名人が国民栄誉賞を受賞されるかもしれないタイミング。

そこで『浪速の白雪姫』と呼ばれる将棋界のアイドルが失踪したり自殺未遂したら、最悪のスキャンダルになる。

とそんな事情も相まって、月光会長から二人で数日の逃避行を勧められることに。

宿の手配をして、各所への連絡も請け負ってくれて、最高のサポートでしたね。

「悪党」とか八一に言われる場面もありましたが。

『八一くん』と。『銀子ちゃん』と。そう、名前を読んでくれたあの台詞はとても暖かくて、打算もあるでしょうけど、それだけじゃないと感じさせてくれました。

 

姉弟子を連れて自殺の名所に行って。そこから八一の実家に顔を出すことに。

衝撃を受けたり、緊張している姉弟子は可愛かったです。

合間合間で、表紙にあるような幼少期の二人のエピソードが描かれて。この二人、手をつなぐことに躊躇いがないなーと思っていたら、この時からだったんですね。

『二人で外に出る時は必ず手を繋ぎなさい。それが出来なければ破門や』という師の教え。それをずっと守って来て……けれど、いつしか離れてしまった。

 

空銀子という少女が、いかにして将棋に出会って棋士になったかも描かれていきました。

体が弱かったこと。病気のこと。八一の周囲にいる女子を蹴散らしていったこと。

女流のタイトルに挑戦したこと……そうした積み重ねの果て。「一番いいと思った道が行き止まりだった」という独白が胸に痛い。

ここまでフラストレーションを溜めた果ての「封じ手」は中々痛快だったというか、八一が男を見せてくれて評価を一段も二段も上げましたねぇ。格好良かった。

その後別の女の事気にしてばかりで減点くらってましたけど。まぁ、彼らしい。

 

銀子が復活し、彼女も将棋星人の領域へと足を踏み入れて、また壁にぶつかるかもしれないけれど、今の彼女なら大丈夫と信じられます。

……桂香さんが、伝えなければならないと思っている事とか、あいに関する気付きとかで不穏な気配もするんですけどね……