「なにがどうなっているのかは分からないし、たかだか将軍の俺には分かる必要もないことだ。俺は阿選様の麾下で、それは変わらない」
行ってから、友尚は寂しげに笑んだ。
「けれども、いまの事態は間違っている」
戴国の寒さを肌で感じ、王宮へと戻った泰麒。
少しでも民を救うために手を尽くそうとしてますが……阿選によって簒奪された王宮は中々の魔窟と化していて。
国内に蔓延している、突然豹変してしまう「病」が宮廷にもはびこっていて。
そんな中で、冒頭から阿選が泰麒を呼び出して。顔を見せていないとのことだったので、ここにきて動いたのはちょっと意外。
驍宗様の麾下だった琅燦が、阿選の傍で色々とやってるのが、なんなんでしょうね。
琅燦の言い出した「確認する方法」が荒っぽくて、それに乗っかる阿選といい麒麟をなんだと思ってるんだ。
表に出てこないとはいえ、トップが阿選であることには間違いなく、彼に帰還を許されたことで、事態が少しは進むかと思えば。
冢宰が邪魔をしてきて、亀の歩み。かなり丁寧に、沈みゆく朝廷を描いていたので、鬱憤を覚えなかったというと嘘になります。
とはいえ、阿選麾下の中でも、それぞれに思う所があって。恵棟のように泰麒に仕えてくれる人員が残っていたのには、正直ほっとしましたね……
一方で、驍宗様を探している李斎たち。
こちらも遅々として進まず。まぁ、確かに片腕の将軍が伝手を頼りに少数で探して、速攻で見つかるくらいだったら、この六年の間に誰かが見つけていたって言うのは、あるでしょう。
それにしたって断片しか情報が集まらず、なかなかもどかしかった。
P193辺りで琅燦たちが話していた、王と天命の話は興味深かったですけど。
王を封じて、実質的に位を奪った状況じゃなかったら、もっと楽しかっただろうなぁ。
こういう設定掘り下げるトークは好きです。ただ、天命を疑うような話が、真っ当な王のもとで出るはずもなく、今だから出来る会話なのが悩ましい。
しかしまぁ、二巻の終わりは凄まじかったですね。これで1か月待たされた人々は、どれだけ打ち震えた事でしょう。