「(前略)けれども、結果を得たいと思うその気持ちこそが、結果から身を遠ざけるのだと――これは修行者の心得なのですが」
(略)
「修行に成果を求めてはならない、と何度も師に言われました。それは修行をなまくらにする、と」
魔の宮廷で、泰麒の行いに迷いを得た項梁。
話し合い、その真意を知る序盤の会話が好きです。
慈悲の生き物である麒麟ではあるが、泰麒は角を失い病んだ果てに、策を練り疑う強さを得た。
それは、確かに強さと表現するべきものだと思います。ただ、泰麒に向いているかと言うと、どうしても過去の幼い姿がよぎって、少し泣きたくなる。
P277の「もう子供ではないんですよ」、「たぶん、良くも悪くも強かになりました」という泰麒に「惜しくもあるが、心強い」と返す場面がありますが、まさしく同じ思いです。
一・二巻でかなり丁寧に、戴国の現状を描いていて、ここからどう展開するものかと思っていたのですが。
三巻は結構情勢が動いたというか、明らかになったことが多かった印象です。
国や朝廷にはびこっていた「病」の正体、泰麒の補佐であった正頼の現状と抱えていた事。
阿選の来歴や思考。琅燦と阿選の会話や、天を試そうとする行動原理の一部も語られました。琅燦の方は、まだまだ腹に抱えてる物がありそうですけど。
そして、終盤ついに明かされた、驍宗様の行方。
王を殺せば次の王が立つ。だから、初めから殺す気はなかった、とは書かれていましたが。
それにしたって大胆な封じ方ですね。それで生き延びている驍宗様も凄いですけど。
P99で語られた、「中日までご無事で」と言われたあとの驍宗様と麾下の会話が良かったなぁ。自分の分を、性格を分かっていて、戴を出ようとしていた下りは驚いた。
泰麒が、阿選の支配する宮廷で、少しずつ味方を増やしているのが、前へ進んでいると思えて楽しかったです。
潤達がいっていた「けれども知らずにいて受け容れることと、知っていて受け容れることの間には天と地ほどの違いがございます」言葉が、全てなんだよなぁ。阿選と麾下の間に、どんどんと壁が生じていたようですし。
王を遠ざけておいて、距離を取った阿選は、やはり王の器ではなかったというところか。
驍宗様と縁があった轍囲の民の在り様が、戴の現状にあって、とても眩しかった。