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「……奇蹟的な存在だから真実だと見做される……」

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「台輔自身がそう言っていたんだそうだ。天啓が真実として通用するのは、麒麟という存在が奇蹟的だからだ、と」

 

「耐え忍ぶに不屈、行動するに果敢」。それが戴の気質だと思っている。

幼少期の泰麒は、それと真逆だと言われていたが……驍宗様は、それと異なる評価を下していたという。

うん、彼の目が正しかった。三巻最後で描かれていましたが、王である驍宗自身が、それを体現しているのがまたいいですねぇ。

 

閉じ込められ、それでも道を探し続けた。命を繋いだ。可能な範囲で祀を欠かさなかった。

……そして、ついに彼のありかに目星をつけた配下が、助けに駆け付けるより先に、自分で脱出して来るんだから、傑物と言うほかない。

魔窟で少ない味方と戦い続けた泰麒と、良い主従ですよ本当に。

李斎たちの念願かなって、王との合流が叶い、これで全てが収まる……と安堵した隙を突くように、苛烈な展開に引きずりこんでくるのだから、作者様は容赦ない。

 

いやはや、阿選も思った以上にしぶとかったというか。

反抗勢力が、耐え忍びついに反撃をという場面で的確に叩いてくるんだものなぁ。

恵棟が結構好きなキャラだったので、容赦なく切り捨てられ、病に囚われてしまったのが辛くて辛くて仕方ない。

 

再び王を迎え反撃しようとした。しかし、王は捕えられてしまった。

もはや打つ手はないかもしれない。それでも、と。驍宗様を処刑しようとする場所へ、駆けつけた人々が居たから、何とか窮地を脱する事が出来た。

 

いやはや正直、あそこまで状況を整えたところからひっくり返されたので、残りページを見てバッドエンドにはならないよね?! と不安になりながら読みました……

泰麒が、王の下へ馳せ参じようとした無茶には震えた。元より怪我をした身でどこまで、無理をするんだ……

多くを取りこぼした結末。ハッピーエンドと呼ぶには、失われたモノが多すぎる。けれど、それでも。王旗と麒麟旗が掲げられた場面には、感じ入るものがありました。

 

読み終えて、記事を書く前に他の方の感想とかもつらつら見ていたのですが。最後の挿絵。

戴の史書の厚みが、この王朝が長く続くことが約束されたものだという解釈があって、それが素敵だと思いましたねぇ。

来年刊行予定の短編集で、戴の落ち穂拾いをされる予定だそうで、泰麒と王のやり取りとか、色々描かれると嬉しいです。恵棟のように病んだ人々、麒麟の奇蹟でどうにかなりませんかね……無理かな……