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1124日開催の東京文フリで頒布された、コピー本。

68Pもありますけど。「友」・「レンズ」・「夜」で三題話を、大宮コウさんと斜線堂有紀さんがそれぞれ執筆されてます。大宮コウさん、カッコ書きでメインが打倒斜線堂有紀になっておられますが。

 

・『最後の写真』打倒斜線堂有紀(大宮コウ)

「ただ、やることは決まってるよ」

『……そうか、まあしたいようにしろよ』

 

友人に勧められ、SNSに写真を投稿し続ける男『メガネ』。

こだわりがあるわけではなく、あくまで素人の写真で、たまにうまく取れたものをアップしている。

それを続けていたら、なぜかフォロワーが増えた。と言っても、百にも届かない程度でしたが。それでも過分だと感じていた所に、フォロワーの一人から、「私の写真を撮ってください」と依頼されて……

生きるのが下手な男女の、交流の物語。

 

泣くべき時に泣けるのって、ある種の才能ですよ。と言い切ってしまうと、ちょっと語弊がありますが。

20数年生きてると、何度か葬式に参列した経験もありますが。あまり泣いた覚えがないですね……自分よりもっと親しかった人々が、悲嘆に暮れている姿を見ると、自分が泣くのは烏滸がましいとか感じてしまって涙が引っ込む。

でも、涙は悲しみの象徴のように思えますが、全てではないんですよね。泣かずとも悲しむことは出来る。そして、仮に悲しまなかったとしても。別れを惜しむことは、できると信じたい。そんな気分になる話でした。

 

・『適性の適正の静的な性的、あるいは鬼村幸奈の物語』斜線堂有紀

予め言っておこう。これは木村友佳が鬼村幸奈を監視していた一年半の物語だ。

二人の関係は動くこともなく、この物語に納得のいくものは存在し得ない。

 

SNSに投稿される、エログロなどの不適切な投稿。

新設された当初、大量に投下したそれに悩んだ運営がとった方法が、AIと人間の同時起用。AIがチェックしてきた「不適切の可能性がある」モノを確認し、投稿やアカウントを削除したりするコンテンツモデレーターという仕事。

2割くらいはまちがってピックアップされたものらしいですが。8割は不適切投稿なわけで。辞めていく人も珍しくはない。

 

そこで働く木村友佳は、不適切動画の中に、かつての級友である鬼村幸奈の姿を見つけた。

動画は削除したが、アカウント自体には手を出さなかった。職務不履行だと分かっていて、それ以降も投稿される動画を、最後まで、見る事となった。

一時同じ時間を過ごした、女2人の、その後決して交わらなかった道のお話です。

 

何を言ったものだろう。どんな言葉を紡いだ所で、日暮のようにきっと木村を怒らせてしまうだろうな、と思う。

彼女が抱えていたものは、彼女にしかわからない。不理解と、後悔と、感傷の話です。

 

本筋とは関係ないですが、意識してキャラの名前を似せて来てますよね。木村と鬼村の他に、器村もいますし。辞めた新人と、その後とった新人の名前の読みが同じですし。

描かれていたのはAIでは判別できない部分を、人間がチェックしているという仕事ですが。

それをするのは、決して「私」や「アナタ」じゃなくても良いと突き付けられるようで、人間もあくまで部品に過ぎないと見せつけられたようでちょっと鳥肌たった。

 

巻末にある寄せ書きが笑えた。

斜線堂有紀さんの方は、架空の友達と架空のスティーブン・キングに囲まれてるし、大宮コウさんの方はTwitterで募ったコメントが載っている。カオス。

寄せ書きには毒が塗ってあるし、『打倒斜線堂有紀』買った人燃やすしかない発言もTwitterで見たので、このままでは命が危ういかもしれな……おや、こんな時間に誰か(略)