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「届かない手紙でも、書いていいんだよ」

 

三日月堂の新作。

5巻目にして、三日月堂の過去を描く短編集です。

『ヒーローたちの記念写真』。本編でも登場した「我らの西部劇」を執筆していた片山さん達の話。三日月堂で印刷しようと話を進めるまで。

フリーライターだったが、担当が入れ替わったりする中で、刷新についていけなかった。原稿を改変されたり、トラブルもあったみたいですが、揉めた事で敬遠されて仕事が減った。失敗した部分も丁寧に描いてるので、ダメージがデカい……

そして片山さんが急逝してしまい、未完の本となってしまったものが、未来で印刷されるんだから、縁だよなぁ。

 

『星と暗闇』は弓子の父親の話。『届かない手紙』は弓子の祖母の話。『空色の冊子』は弓子の祖父の話。と三篇弓子の家族のエピソードがあったのは嬉しかったですねぇ。

いや、弓子の父が結婚して妻を亡くした下りだったり、祖父視点は祖母が亡くなった後の話だったりと、要所で弓子の過去の重さが解像度増してって、痛いんですけどね……

それでも、みんなで一緒に食卓を囲んだ場面があったりして、温かさもあったから乗り切れた……

 

『ひこうき雲』は弓子の母カナコの大学時代の友人、裕美の話。

『最後のカレンダー』は三日月堂がまだ営業していた時に依頼を受けていた笠原紙店の話。タイトル通り、三日月堂を締める前に受けた仕事の話。「三日月堂の仕事を、お客さんにも覚えていてもらいたい。なんだかそんな気がしたんだ」という店主の言葉が、しっかり届いているのが見えてよかった。

最後の『引越しの日』は、弓子が三日月堂に引っ越す時の話。大学の時の先輩が出て来て、彼女と弓子がお互いにいい影響を与えていたようで、ちょっとほっとしましたね。

いや、久しぶりの新刊でしたが満喫しました。たしか6巻も出てるはずなので買ってこなくては。