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「俺の仕事に文句があれば、いつでも腕を落としてくれて構わない。客にはその権利がある。そして万が一杖が損なわれたら、俺は死んで謝罪に代える」

 

伝説の魔法杖職人ムンジル、その最後の弟子であるイクス。

師匠が亡くなり、店の始末をつけ村を去ろうとしたその日、師匠の杖と修理を請け負った約定書を持った人物が来訪して。

自分で半人前と言う職人見習いであるイクスが、依頼者と一緒に杖を治す為に調査する話です。

 

杖に使われている材料を調べる為に、姉弟子を頼って。
素材が竜の心臓だと判明して喜んでた職人姉弟は、根っからの職人と言うか。新しいもの見つけるの好きだろ、君ら……
師匠も偏屈だったと言いますし、一門こんな感じなんだろうなぁ……と言うのが感じ取れる。

しかし、素材が分かっても、1000年前に絶滅したとされる竜の心臓なんて、取り扱っているはずもなく。

図書館も活用して調査をするものの、断片的な情報しかなくて。

時間制限もある状態で、できる範囲で可能性を潰しつつ、「それっぽい」所に決め打ちで探しに行く事になってましたしね……

 

でも、その調査を結構丁寧に書いてましたし、非力な職人と杖が壊れた魔術師。

どちらもまだ道半ばに居る、若い世代であることを考えれば、かなり健闘してると思う。

イクスは、魔法杖職人として組合に登録していないこともあって半人前と言いますが。杖を修理する際の誓い、師匠に教えられた覚悟を貫く彼の姿は、結構好ましいと思います。

タイトルにあるとおり、『竜』を巡る話で……古き伝承を辿る中で、イクス達は今は失われた『祭礼』についても調べる事になっていくのですが。
その果てに辿り着いた真実には、ただただ驚きました。実際目の当たりにしたイクス達の動揺たるや、いかほどだったでしょう。

 

魔法もあって、竜の伝承もあるファンタジー色の強い作品ではありますが、派手なバトルとかはなくて、ただその世界を確かに描いている感じ。結構地味というか、渋い。

彼らに見えた世界を、見せてくれたようで結構満喫しました。2巻の準備もしているとかで、出たら買います。今度はどんな杖が出てくるんでしょうね。