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「本当に……貴方なんですね」

 

Act.2が幕を上げる、待望の新刊ですよ!!

1巻が出た当初は先が見えず、Act.1だけ書籍化して終わって愉悦するなんて話も見ただけに、感無量です。

今回もchibi先生のイラストは素敵ですし、加筆修正もあって満喫しました。

章タイトルが掲載されているページに、ミラのイラストが掲載されていてちょっと驚きました。やだ思ってた以上にかわいい!

 

章が切り替わったという事で、装丁も変化してますね。

13巻はタイトルが黄色で、背表紙から裏表紙にかけて紺色というか。作品に則っていうなら夜になった空と同じ、オスカーの瞳のような感じでしたが。

4巻ではそれが反転した上、表紙の文字が白になって、サブタイトルの「白紙よりもう一度」と言うのを改めて突き付けられたような気持ちになりますね。

表紙に居る二人も、また視線が合わない立ち位置になってますし。あと、今回分厚いですね。「無言歌」から「見えない貌」まで収録されています。え、これ定価で良かったんですか。

 

以下、本編の感想です。

ネタバレしてるので予防線。Act.1読了後に読まれることを推奨します。

……まぁ、あらすじからして、ネタバレ気味ではありますが。

 



オスカーが過去に戻り、歴史は書き換えられた。

Act.1においてトゥルダールが滅びた原因を取り除いたため、四百年たってもかの国は魔法大国として健在であった。

けれど、ファルサス王家が沈黙の魔女に断絶の呪いを掛けられたことは変わらなかった。

魔女に挑む前に、魔法大国で知恵を借りようと思い立って、隣国とはいえ速攻で足を運ぶ辺り、相変わらずオスカーの行動力は凄い。

 

そして彼は当代の王に導かれ、地下で眠りについていた少女と出会う。

彼に会うために四百年を超えてきたけれど……書き替えられた世界に置いて、オスカーにその記憶はない。

更には、ティナーシャを次期女王として担ぎ上げようとする動きもあって、二人の関係は大分違った雰囲気に。

 

ただ、今回はかつての恩と思い出がある分、ティナーシャが何かにつけ「最悪結婚しますか」と言う案を出してくるのが、ちょっと笑える。別の歴史では、逆だったんだよ……

最もオスカーは王太子として自らを律する事に長けていて、他国の次期女王ともなると、その線を中々超えてこないからもどかしいですね。

 

183Pで「俺は振り回されないからな」と言ってましたが、それを言ってる時点で振り回されてるんだよなぁ……と、ツッコミ入れようと思ったら211Pでオスカーが自覚してるのがツボに入って困った。

どの場面でも、二人が居る場面は楽しい。地下迷宮を探索してる所が好きですねー。「帰りませんか?」「駄目」あたりが特に。

その後、宴席でうっかり呑んで酔ってるティナーシャもまた一段と可愛かったですけど。

「嫌な感じの話と嫌な感じの話がありますが、どっちから聞きますか」とか、一精霊術士(王女扱いになってますが)である彼女の緩さにちょっと和む。

……魔力は相応にあるので、周囲が大変そうですけどね……

 

あと今回驚いたのは、ナークが改変されずに残っていた理由。魔法球の使用者ではなく、さらに消え去る時にオスカーの傍にいなかったからなのか。あの、青い剣士が残したって言う剣と同じか。

前に古宮先生が、過去に戻った時のオスカーにあった選択肢として「改竄失敗を待つ」という絶対選ばない可能性の話をされてましたが…あの魔法球、変なところに抜け道があるな。

改変の後取り残されて、ティナーシャの傍にありつづけて。再びオスカーと出会った時、すりついてくるナークは本当可愛かったですね。うん、再会できて良かったね……

 

あとは冒頭でも言いましたが加筆があちこちされていましたし、挿絵がまた素敵でした。

眠りについていたティナーシャの、目覚めのシーンですとか。あとはあちこち、なんか見覚えのないシーンだったような気がしますが。

魔力が膨大でも、魔女として永らえた経験がない分、今のティナーシャには未熟な部分もあって、だからか容赦なく出血させて来てるというか。ボロボロになってる場面が多かったような。ある場面のミラみたいに、オスカーに「助けて!」って駆け寄りたくなった。

いや、大抵駆けつけてくれるんですけど。「早く早く!」みたいな気分。

 

トラヴィスがティナーシャに魔法の眠りを唆すところとかもありましたし、その後もちょっかいだしに来るあたり暇なのか彼は。……いやまぁ、スペック高いのもあって時間なんてどうとでも作れるんでしょうけど。

気になる相手を見出して庇護しているタイミングというのもあって、とても人生楽しんでる感じがする。

 

今回のもう一つの目玉はやはり次巻予告でしょう。

『Unnamed Memory』5巻は今年の夏発売予定、ついに沈黙の魔女が現れて色々な事実が明らかになるエピソードが収録される巻でもあるので、書籍派の人々も楽しんでほしい。

そして、同時に明かされたかつて電撃文庫から出ていた『Babel』が電撃の新文芸より再出発するとのこと。

イラストも当時のまま森沢晴行さんということで……もう、本当にありがとうございます!! 続報がこないものかと、ずっとずっと待っていました。

最初に予告見た時変な声出ましたからね。夢かと思った。三度見くらいした。

 

『Unnamed Memory』は、古宮先生が書かれている『-world memoriae-』シリーズの1作でしかなく、かなりの広がりを持っている作品なんですよね。

中でも『Babel』は、『Unnamed Memory』から300年後のファルサスも描かれる正当な続編という感じで、こちらもまた素敵な作品なんですよ!!

是非『Unnamed Memory』から入った人にも読んでほしい。