「死を悲しめ。ただ、哀れむな。そして落ち着いたならば、その人が生き切ったことを誇れ。――そういうことだと私は思っている」
『境界線上のホライゾン』本編完結後の物語です。
じゃあ、本編を読んでいないと楽しめないのか、と言うとそれも違う。
冒頭に「世界観説明」、「メインキャラクター説明」、「シリーズ各巻ダイジェスト」が収録されていて、最低限の情報は把握できます。
本編では、過去の幻が浮かび上がる怪異が生じています。
そこに至るまでどんな出来事があったのか。それを振り返りながら異変を解決しようとしていくので、『ホライゾン』の入り口としてかなり適している印象。
実際コンセプトは「これから始めるホライゾン」だったみたいですしね。
……ここからホライゾン本編に戻ると、まだ弾けてないノリキとかウォーモンガーじゃない正純とかを見られるのか。それはそれで楽しそうだな……
それに本編は『神々のいない星で』のようにチャットノベルのような、アイコン付の会話主体で進んでいくので、読みやすいです。
電子版を購入したのですが、アイコンに色がついていて分かりやすかったですしね。
気になる方はカクヨムの方でも連載していたはずなので、そちらを確認してみるのも手です。……実はカクヨム版未読なんですよね。読みそびれている。その内読みたい。
過去の幻影は、ターニングポイントとなった所を繰り返し再生していて。
かつて、力を合わせ乗り越えて来た。けれど、幻影は不完全で、その時に居た人材が欠けているために、事態を解決できない。
例えば、二代と相対するときに賢姉がいない、みたいな形。
故に現在の彼ら彼女らが介入して、沈静化を図るわけですが。公式のIFストーリーと言いますか、ある意味強くてニューゲームと言うか。
武蔵勢が味方を増やしたり、地力を上げて来た成長の様子をしっかり見せてくれて、楽しかったです。
両親と本舗組推しの豊が、一番いい空気吸っているというか。本編通して一番満喫している感じがして最高でしたね。本人も途中で「私が最高に楽しいから最高です……!」とか言ってましたし。
他の過去再現においても、点蔵とメアリのやり取りが健在……というかメアリの破壊力が増してるようで、そりゃあ通神帯も盛り上がるよなぁとか。
まさかの世話子様のレギュラー化。しかも、割と武蔵に馴染んでるのも笑える。
失敗したときの謎のブザー音で自動人形たちがワイワイやってるのですとか、水が追い付いてこなかった二代とか。
気に入った場面を挙げて行くとキリがないくらい、変わらずのネタの宝庫で充実した一冊でありました。