「もちろん、正しい質問をするんだ」
異世界に召喚された少年ケースケ。
しかし、既にその世界は滅びかけていた。
人が結晶となり消え、砂と散る異変に呑まれた世界で、彼は一人、蒸気自動車で旅をしていた。
その途中で、同じく一人旅をしていたハーフエルフの少女ニトと出会って。
巡り合わせによって、彼女の探し物を手伝う事となり、二人はあらゆる問いに答えをくれるという魔女の伝承がある街を目指す。
あぁ、なんて綺麗な物語だったんだろう。
滅び忘れ去られる一歩手前の危うい世界で、それでも生きている人々の姿が。
出会い、語らい、そして別れる。
纏めてしまえばただそれだけなはずなのに、胸に迫るものがある。
滅びかけの世界で変わらず仕事をする、修理工のおじさんがいた。
連れ立って旅をする老夫婦がいた。最後に家族に会おうとした人がいた。
あるかも知れない場所を探そうとした少女がいて、人探しと嘯いて放浪していた少年がいた。
退廃した世界で、分かりやすい救いなんてなくて。だからこそ、他愛無い会話が愛おしいのだ。ニトとケースケが、あの駅で出会えて本当に良かった。
旅の中で絆を育み、足を止めた時に相手に言葉をかけてあげられる二人の関係が、とても好き。P275とP305の挿絵と、その前後の会話とかいいですよね。