「いきなりわたくしのせいだと決めつけないでくださいませ!」
表紙ははじまりの庭イメージで、扉絵はピカピカ奉納舞だそうで。あぁ、なるほど。これは目を奪われるのも無理はない。
フェルディナンドがアーレンスバッハに向かい、エーレンフェストでは粛清の準備が進む。
そんな状態で迎えた、ローゼマインの貴族院3年生。
警戒する事項が多いため、寮での食事時間を分けたり、ギクシャクした感じに。それを打破したのが、フェルディナンドからの伝言なんだから、やっぱり欠くことの出来ない人材なんだよな、という気持ちが強くなりましたね……
あそこで、ローゼマインの気持ちが少し前向きになったのは本当に良かった。
そこで活動的になったらなったで、色々騒動巻き起こすんだから凄い。いやまぁ、共同研究とかは、逃げにくい状況だったのもありますし、加護の多さに寄る制御不能状態もローゼマインのせいだけではありませんけど。
全体的には、掌で掬った砂が、さらさらとこぼれ落ちていくような雰囲気ですね。多くのものが喪われていくのが感じられる。
保護者や側近たちに気遣われているローゼマイン視点ですら、それが見て取れるのだからよっぽどですよ。
旧ヴェローニカ派の子ども達から情報を得られた事もあって、
プロローグはWEBにもあった、ヒルデブランド視点。描き下ろし短編は、上級司書として貴族院の図書館へ派遣されたオルタンシア視点。
王族も一枚岩ではないというか、大分ギスギスしてると言うのが伺えます。政争の結果、グルトリスハイトを持たぬ王として即位した事で、大変だったのは間違いないでしょう。
オルタンシア視点で「どれだけ王族とその周囲にすれ違いが起こっているのでしょうか」と言う一文がありましたが。
貴女の想像以上にすれ違いがあり、喪失が積み重ねられてきたんですよ、と言ってやりたい。
それに比べるとソランジュが語った、知識の番人の在り様には好感が持てますね。誇りを持って仕事していたんだ、と言うのが分かる。立派な人達だったんでしょう。あぁ、本当に惜しくてならない。