「歌なんて、くだらないですよ」
積読消化。
第7回ガガガ大賞受賞作。刊行はなんと2013年5月です。いや、刊行当時に買ってたんですって。その証拠に金帯ついてますからね。
大賞を! 7年も! 積むな! と自分にツッコミ入れたい感じ。
読みたい気分にならないと、読んでて楽しくないというのがモットーみたいなものなので、気が乗らないとこういう年季入った品が生まれます……
閑話休題。
タイトルに「短い歌」とあるように、短歌を主軸に置いた作品です。
一度、世界から三十一文字の歌が喪われ、帰って来た。
タイトルのもう一方、カクリヨとは失われた歌が迷い込んだ、異界のこと。逆に、歌が生まれ帰って来た世界はウツシヨと呼ぶようです。
しかし、ウツシヨに戻って来た歌は変質し、詠み上げると禍を招くものすらあった。
それ故に管理の必要が生じ、それが利権ともなり、歌を知る者同士での争いなんかも起こるようになったみたいですが。
普通の人々は、そんな事情も知らず、五七五七七の歌を諳んじる事も出来ない。
本格的に学んではいないけれど、国語の授業で触れた百人一首。未だにいくつか覚えていますよ。そういう人は現実にはそれなりに居そうですけど。
この世界には、ほとんど居ないのだ。何がしかの縁によって、禍を招かない歌を知る事もあるようですが、稀な例でしょう。
学校で学んだことも自分を構成するピースとなるわけで、喪失が、悲しいなぁと設定にしんみりしてしまった。
さて、まぁそんな世界で歌に触れている人々が描かれるわけですが。
祝園という、数多くの歌を収拾している名家の当主。
一人戦国時代なんて異名を持つ、傍若無人勝手気ままな歌人。
この二人を中心として物語が進みます。章ごとに、視点が切り替わる構成。
名家が抱える歌を狙った刺客を蹴散らす話があったかと思えば、一人戦国時代が歌の噂を聞きつけて東奔西走、持ち主を打破して歌を集める話があって、割と自由でしたね……
ファンタジー要素強めですが、戦闘がないエピソードもあり、全体的には落ち着いてる作品ですねー。嫌いじゃないです。