「……僕がやったんじゃないですよ。いつもだれかに頼って――」
『きみがやったんだよ。あたしはちゃんと知ってるよ』
久しぶりの杉井先生。
ご存知の方にはおなじみの、音楽をテーマにした作品。
後書きにありましたけど『さよならピアノソナタ』が2007年出版ですって。13年前……?嘘……ってなった。
面倒くさい少年少女が、音楽を通して繋がって、少しずつ世界を広げる話です。
作中の雰囲気もノリも、これぞ杉井作品と言う感じで、「またコレか……」って意見も出そうなテイストですが。
コレだよコレ! と個人的には大うけ。良くいく店で、割と決まったメニューを注文するタイプなので楽しい。
上手く言葉にできなくてもがいて、それでも音楽で何かを伝えようとする彼らの輝きが好きなので、懲りずに展開していってほしいなぁ。
動画投稿サイトに、オリジナル曲を投稿していた少年、村瀬真琴。
姉に唆されて、一度女装して投稿してみたら、それでいつも以上の再生数を獲得してしまい、退くに退けなくなった男。
女装ネタを掴まれて、進学した先で音楽教師の手伝いとかさせられてましたしね……とはいえ、性格とか見るに女装という弱みがなくても、なんだかんだ理由付けて手伝いさせられてそうだよなぁ、と言う感じはする。
彼は、手伝いを通じて、一人また一人と女の子を攻略していく……いやまぁ、間違ってないですよ、割と。
それぞれに事情を抱えて、立ち止まっていた少女たちの背中を押したのは間違いなく彼の功績です。
誇れよ、少年。歌が残るように、記憶が残るように。君のしたことは、彼女たちの中に在り続けるだろうから。