「(前略)だから、どれほど世界の現状が不自由なものであっても――僕は混入された便利さより、あるべき不自由を望むよ」
Babelリブート刊行おめでとうございます!
以前電撃文庫から刊行されていたんですが、2巻で打ち切りの憂き目に(担当さんが刊行模索中らしき話はちらほら聞こえましたが)……それもあって『Unnamed Memory』刊行したときは、イチオシという事を抜きにしても宣伝しまくったんですが。
それが結実したように思えて嬉しいですねー。
電撃文庫時代は、文庫に納める為にシーンを削ったり、色々と組み替えたりとされていたんですが。今回は新文芸という事で原点そのまま(加筆はあり)です。分厚い。紙でも480Pくらいあります。
この作品は、『Unnamed Memory』と同じ大陸を舞台としていますが……300年後のエピソードです。
現代地球の文系大学生女子・水瀬雫が、不思議な穴に吸い込まれてしまう。異世界転移モノですね。
文字は読めないものの会話は通じたので、簡単な販売員のバイトをして日銭を稼いでいる辺りは強かと言うか。これから何をするにしても資金は必要だ、という割り切りはすごい。
「やることやってりゃ気も紛れます」というのも本音でしょうけど。
そんな彼女が、魔法文字を専攻とする魔法士エリクと出会って。
エリクは、「異世界から来た」という前例がない少女の言葉を信じてくれる稀少な人物で。
更には魔法大国ファルサスならば、あるいは帰還の術が見つかるかもしれないという助言や、実際にファルサスを目指す雫の旅に同道してくれて。
彼自身も雫に文字を教わるという条件を出してはいますけど。完全に無償の善意より信じやすい。エリクと初期に出会えたのが、何よりの幸運ですよね。
タイトルが『Babel』という事もあり、この作品のテーマの一つは「言葉」です。
何故、異世界出身の雫とエリクの間で会話が成立するのか。その真実は、物語終盤で明かされます。
言語に関する疑問自体は、実のところ『Unnamed
Memory』でも抱けなくはないのですが。回答については『Babel』を待たなくてはならないんですよね……。
UMでメインを張った王と魔女はどちらも腕利きでしたが。
本作の主人公二人は、どちらも学者よりと言いますか。「湖の底に行きたいです」への回答、オスカーだと「水妖を脅す」になりますが、エリクの場合だと「かつて辿り着いた先人の文献を調べる」になる辺りで察してください。
なので、戦闘とかになると結構ハラハラします。それでも、退けないと踏み込んでいく雫の覚悟が好きでもあるんですけど。
あとなんか最後に、見覚えのある名前が出てきましたね。
いやーよくある名前なのかなー(棒)。実際書籍でUMにハマって、Babelに来た人がどんな反応するのか、凄い興味ありますね……
2巻は秋予定。またしても雫の覚悟キマった姿が見られるので楽しみ。文庫で出番のなかった3巻以降のキャラも待ち遠しい。