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「そうだ、これが読みたかったんだ。この本に会いたかったんだ……」

 

『むすぶと本。『外科室』の一途』と同時発売。

こちらは単行本で刊行されて、表紙以外にイラストは無し。

雪降る街に、一軒だけ残った書店。しかし、店長が事故で亡くなり、店じまいをすることに。

 

お客様への感謝と在庫の整理を兼ねて、最後の1週間だけ開店する事も決まり、残されたスタッフは準備に追われていた。

そんな中、店長の遺言によって想いを託された少年が、店を訪れて。

それが『外科室』でも主人公を務めた、本の声を聴けるというむすぶ君。フットワーク軽いな……

 

お客さんとコミュニケーションを取り慕われ、閉店が惜しまれる書店。

常連だった人、ほとんど行ったことはないけれど印象的な思い出がある人。

閉店の話を知った人々が、想い出を胸に訪れて、むすぶ君がそれを壊さないように手助けしていて。温かさが胸に染みる。

 本も、書店も、進化の途中にあり、今ある形は滅びてゆくのかもしれない。

ぼくらが愛してやまない一切が存在しない世界が、訪れるのかも。

けれど、それは未来のことだ。

本も、書店も、まだぼくらが生きているこの場所にあり、ぼくもまた生きているかぎり本と言う健気で優しい――奇跡のような存在を、愛するだろう。

彼らと出会うために、書店へ足を運ぶだろう。

本編の終盤に記された、このくだりが。一介の本好きとしても、元書店員としても、印象的で忘れ難い。

業界は厳しく、工夫しても売り上げが伸びるかは分からない。そもそも、注文して希望数が来るかどうかすら、あやふやだ。

それでも、今も確かに本と書店はそこにあって。どうしようもなく、心惹かれるのだ。