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電子専売、川上稔先生の短編集第2弾。
今回もタイトル通り「パワーワードのラブコメ」が5本収録されてます。
収録作品の中だと『鍵の行き先』が一番好きですかねー。
『再会の夜』だけ描き下ろしで、他はカクヨム(『川上稔がフリースタイルで何かやってます』)に一度は載ったことがあるハズ。
出し入れが行われる事もあって、把握できてないんですよねぇ。
01:幸せの基準
コイツこういうヤツだった!
父が亡くなり、母と姉妹で三人暮らしになって。
仕事一直線となった母の代わりに、食事の準備をすることになった姉の話。
「母さん」「娘」呼びで個性が光るからマーすごいというか。
少しずつ腕を磨いていって。母の弁当なんかも作ってはいたが、高校進学を期に自分の分も作ることに。更に、妹の方でも学校でトラブルが発生して、給食取りやめで手間が三倍になってたのはお疲れ様ですとしか言うほかない。
冷食とかも解禁して、それっぽくまとめてそれなりに楽しんで食べていたけれど……クラスに、つまらなそうに弁当を食べている男子がいるのに気が付いて。
「そういうもの」として処理してましたが、ふとしたきっかけで会話して、それから踏み込んでみるのが、アクティブで凄い。
あれよあれよと、弁当交換したりしてましたが、寡黙君のワンテンポずれてる感じがしっかり描かれていたので、「こういうヤツだった!」ってツッコミに、そうだねって同意出来たのは笑えた。
02:星祭りの夜
皆、都合のいいことと、逃げ場になることを言ってほしいんだなあ、と。
単立の、変わった風習のある神社の娘。
いや風習が変わってるというか、神主の家系が変わってると言うべきなのかな……
オリジナル柄のタロット作って販売したり、占い出来るようにしたりした祖母が特にキャラ濃かった疑惑はありますが。
どちらかと言うとフィジカル系の神を奉っているが、恋愛系という事になっている神社の娘ということで、占いを頼まれたりするそうで。
何度も行う中で、小細工が出来る程度に腕を上げている辺り、手先は器用そうですね……
そんな彼女が見た「気付いてない彼」の事。
色々と相談を持ち掛けられる側だから見える事とかもあって……でも、そんな彼女の方が最後気付かないとう見せ方がが上手いなぁと思いました。
03:鍵の行き先
自分の理想ってのが、自分じゃないのはチョイとキツい。
背が低い事を悩んでいる男子視点。
それをネタにしてからかわれることもあったため、心に鍵をかけた。
そして体格が影響しない趣味として、本を読むようになって。
自転車に乗って古書店巡りをしたり、版違いの文章違いを楽しんでいたりと、かなり性に合ってたんだろうなという感じはします。
自分とは違うタイプの読書家だ。私はわりと新しいのを多く読みたいので、あまり古典触れられてないですしね……元ネタ・原典に当たりたい気持ちはあるが、時間が足りない……
閑話休題。
2年に入ってからでも部活に入っておくと、内心とか色々関係するぞ、みたいな話を聞いて。
改めて調べてみたところ、文芸部の存在に気が付いて。たまたま窓の外から見た時に、古い装幀の文庫本を目撃したのもあって、部室に足を運ぶことに。
地の文で「背が低いのはこのための伏線か……! 伏線じゃねえよ」とセルフツッコミ入ってた場面では笑った。
名義だけの生徒が多いなかで、部室に足を運ぶ数少ない部員となって。
部長―彼とは真逆の背が高い女子―との交流がスタートしてくわけですが。この二人のやり取りが、微笑ましくて良い。
04:自由の置き場
「――このままがいい。続けたい。もっと良く出来るなら、そうしたい」
『フリスタ』の方に掲載された後書きによれば「頭の良い二人を出そう、と馬鹿な頭で考えたとき~」みたいな身もふたもないような表現をされていましたが。
高校から大学まで一貫性の学校で、一年の時に真面目にやった結果としてトップを取った少女。
内申点とか計算すると、2~3年は馬鹿でも上に行けることになって……これから自分がすることに意味はあるのか、と疑問を抱いて。
なので、1年の時に稼いだ点を減らさないように、最低限のラインは守りつつも自由を謳歌しようとした。
そんな彼女が、隣の席の男子と交流する話。それぞれの授業の受け方が、真逆で中々愉快でしたねー。
でも、描写少ない中で「濃かった」のはやっぱりあたしの弟君なのでは……
05:再会の夜
私が知らないものこそが、やがて私を自由にしてくれる。
書き下ろしエピソード。
湖を中心にした観光で栄えている地域。それなりに人口はあるけれど、都会ではない。
なので「都会」的な、開かれたエリアに行こうと思ったら、朝から家出て乗り換え三回で昼半ば、みたいな手間が居る。
遠出することを「文明摂取して来る」といったり、いざ足を運べば自分を「未開地のゴリラ」とか言ったりする、語彙のセンスが光る女子視点。
……地元の短大の隠語がアレで広まっている辺り、ある意味で地域色なのかなぁとか少し思いましたね。
受験を控えていて。進路に悩んで。
それもあって度々「文明摂取」に赴く中、駅で同じ学校の男子生徒を見かけて。
先を見据えて準備している彼と、まだ何かを探している最中の私の話。
微妙に噛み合ってないようで、でもちゃんと影響を与えてるのが、良い距離感だなぁと思いました。